研究課題/領域番号 |
23K00377
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
竹井 智子 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (50340899)
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研究分担者 |
池末 陽子 龍谷大学, 文学部, 准教授 (10792905)
大川 淳 京都ノートルダム女子大学, 国際言語文化学部, 准教授 (50755288)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 空間 / 非場所 / 場所の感覚 / エドガー・アラン・ポー / ハーマン・メルヴィル / ヘンリー・ジェイムズ / nonplace-ness / 19世紀 / アメリカ文学 / 移動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、19世紀中葉から19世紀末のアメリカ白人男性作家たちの“non-place”の感覚を検証する。“non-place”とは関係性や歴史性が消去された場所であり、「居場所のなさ」に繋がる概念である。「居場所がある」とされ米社会の主流に位置づけられてきた当時の白人男性作家たちではあるが、彼らもまた、生きづらさや帰属の不安を抱え、それを作品内に照射した。彼らの不安が、作中で描かれる場に内在する階層性や歴史にどのように関わっているのかということや、それらから解放された場への想像力を究明する。本研究を通して、現代社会の生きづらさの問題への示唆が得られることも期待したい。
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研究実績の概要 |
2023年度には、本研究に関わる研究者全員が、非場所の概念を含む、空間的転回以降の場所と文学研究に関する文献を検討し、本研究の基本概念の確立と共有をすすめた。同時に、各自で場所・非場所という観点から文学テクストを分析し、発表した。 ポーを巡っては、日本英文学会関西支部大会シンポジウムにて、ポー文学における「現実と幻想のあわい(非場所的空間)」について、女の語りに着目した発表を行った。また、『エコクリティシズム・レヴュー』 (16) に掲載された論文「災難と救済――ポーとアポカリプスの寓話」では、災害や災難といった現実から逃れるための場所を虚構上で提供する恐怖作家ポーにおける「沼」や「海」の表象について、アポカリプスおよび人新世の観点から考察した。 ホーソーンを巡っては、論集『ロマンスの倫理と語り』(開文社)にて、本来自己に属していると思われる皮膚が、客体化され他者によって改竄させられる身体的「空間」として描かれることを分析した論考(「皮膚、テクスト、鏡」)と、フィクショナルな空間における移動(「花崗岩のような群衆」)に関する考察を発表した。また、6月には日本ナサニエル・ホーソーン協会全国大会のワークショップにて、共同体の空間の中で共感によって傷つけられる皮膚について検証した発表を行った。 メルヴィルを巡っては、日本アメリカ文学会関西支部7月例会のミニ・シンポジウムにて「「判読する洞察力」――メルヴィルの著作編集の困難」の題のもと、メルヴィル独自の英語表現・造語は、現存の英語に新たな意味を付すという、アメリカという場所に根付いたものでありながら、そこからの非場所化=脱構築であると論じた。 ジェイムズを巡っては、日本ナサニエル・ホーソーン協会関西支部研究会11月例会において、ジェイムズの小説においては描かれない場が劇作の舞台となっていることを指摘し、舞台の非場所性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通り進行している。当初、初年度に予定していたアメリカ東海岸への調査渡航は円安および現地の物価高騰もあって見送り、国内で可能な予備調査に注力した。一方、2年目に予定していた研究調査を前倒しで行い、有益な資料が得られた。口頭発表や論文による発表は予定通りに進められている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、引き続き文献研究により、文学テクストをめぐる場所と非場所研究についての調査を進める。前年度から引き続き、読書会を通して包括的な理論に関する文献および概念の共有をすすめる。また、19世紀後半のアメリカ文学テクストを場所と規模という観点から分析した文献(Hsuan L. Hsuによる)については、2024年12月に予定されている日本ナサニエル・ホーソーン協会関西支部研究会読書会で報告を行う。 これと並行して、各自で以下の研究を進める。 ポーを巡っては、彼の自然譚及び冒険譚を中心にエコゴシックと場所(没場所)の感覚について研究を進める。 メルヴィルを巡っては、傭兵による中世の戦争から、愛国心を煽り国民を動員する近代戦争への変化を考察する中で、母国という場所に結び付く戦争と、それに批判的な(=非場所)の視点を『イスラエル・ポッター』から読み取る論考を準備中である。また、歌やギター演奏を記録する手段のなかった時代の音楽の在り方と作品の主題の関係を、ドゥルーズ=ガタリの「領土化」や「リトルネロ」の概念を用いて『ピエール』を論じる予定である。さらに、場所と法の関係性を検証し、マンハッタンを舞台とする「バートルビー」における場所の感覚と、語り手の帰属意識について分析する作品論を執筆する予定である。 ジェイムズを巡っては、短編「モード=イーヴリン」と中編『抗議』を中心に、作家のコスモポリタニズムと帰属しえない場所すなわち非場所的場所の感覚をめぐる論文と、20世紀初頭の欧米列強の経済的・地理的拡大と、移動が生み出す価値についての論文の執筆を進める。
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