研究課題/領域番号 |
23K00378
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
永尾 悟 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (80389519)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2027年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 白人性 / 黒人性 / エスニシティ / James Baldwin / Another Country / アフリカ系アメリカ文学 / ホワイト・エスニック / 人種(白人性、黒人性) / セクシュアリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アフリカ系アメリカ人作家のイタリア系移民表象について、南部黒人とイタリア系移民の北部都市への流入が同時進行していた20世紀初頭から中盤までの作品を対象として、時代状況に応じて変化する人種・エスニシティ言説との共振性を探る。この時代は、人種にまつわる新たな表現方法が模索されていたが、作家たちは、都市部で生活圏が重なり合っていたイタリア系を意識し、白人主流社会から排除された彼らの中間性を媒介としながら人種表象を試みた。そこで本研究は、イタリア系表象を通してカラーラインの流動性を描出するアフリカ系アメリカ人作家の文学的想像力について、原稿や創作ノートなどの未出版資料を精査しつつ考察する。
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研究実績の概要 |
本研究は、アフリカ系アメリカ人作家によるイタリア系移民の表象について、南部黒人とイ タリア系移民の北部都市への流入が同時進行していた20世紀初頭から中盤までの作品を対象 として、時代状況に応じて変化する人種・エスニシティ言説との共振性を探る。ハーレム・ ルネサンスを前後とするこの時代は、人種にまつわる新たな表現方法が模索されていたが、 作家たちは、都市部で生活圏が重なり合っていたイタリア系移民を意識し、白人主流社会か ら排除された彼らの中間性を媒介としながら人種表象を試みた。アフリカ系とホワイト・エ スニック集団との近接性は、白人性との対置を前提とした黒人性表象に着目しがちな先行研 究ではほとんど論じられなかった。そこで本研究は、イタリア系移民の表象を通してカラー ラインの流動性を描出するアフリカ系アメリカ人作家の文学的想像力について、作品原稿、 創作ノート、書簡などの未出版資料、さらには当時の新聞や雑誌媒体を精査しつつ考察する。 研究期間の初年度にあたる令和5年度は、Richard Bruce NugentとJames Baldwinの作品および研究資料の整理を行い、研究ノートを作成した。Richard Bruce Nugentに関しては、研究期間開始前に収集していた未出版資料を手掛かりにして作品を再読し、人種・エスニシティ表象について考察をした。James Baldwinに関しては、Another Countryの原型となる未出版原稿を精査し、1940年代から50年代にかけて書かれたこの原稿が1962年に出版されたAnother Countryにおける人種・エスニシティの主題といかに結びついているのかを考察した。これによって、1940年代から1960年代前半までのBaldwin文学の変遷を捉えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
作家と時代背景に関する研究資料を読み進める中で、追加の資料の検証する必要があることがわかり、論文執筆の着手が遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、令和5年度に着手したRichard Bruce NugentとJames Baldwinの作品における人種・エスニシティ表象についての研究を行う。 Nugentについては、死後出版の小説Gentleman Jigger(2008)で描かれるイタリア系男性の身体を媒介とした アフリカ系男性のクイアな自己認識について、ノルディック・イデオロギーに対する作者の批判が読み取れる点を明らかにする。また、Nugentが異人種間の同性同士の身体接触を露骨に描くことで、ハーレム・ルネサンスの規範意識(“the politics of respectability”)に挑んだ点も考察する。この2点 を実証的に論じるために、イエール大学図書館にある作品原稿、創作ノート、書簡などを精査する。 James Baldwinについては、Giovanni’s Room(1956)とAnother Country(1962)におけるイタリア系男性のセクシュアリティ表象が、西洋白人中心主義の基盤となる異性愛規範に対するBaldwinの批判的視座であることを明らかにする。両作品がひとつの作品として書き始められた経緯を踏まえ、イエール大学お よびニューヨーク公立図書館にある原稿や創作ノートを実証的研究の手がかりとする。また、これ以降のBaldwin作品におけるイタリア系表象についても議論する。さらには、Another Countryの執筆中にBaldwinが公民権運動への関与を深めていった点に着目し、1950年代後半から60年代にかけての彼の人種観について、当時執筆したエッセイなどを手掛かりにしつつ明らかにしていきたい。
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