研究課題/領域番号 |
23K00390
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 正範 関西学院大学, 商学部, 教授 (10322976)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2026年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | イギリス小説 / 法廷 / 群衆 / ヴィクトリア朝 / モダニズム / 英米文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ヴィクトリア朝初期から20世紀初頭にかけてのイギリス小説における法廷描写を分析対象とし、劇場空間としての法廷を満たす傍聴者たちが、法的正義と連帯しながらも、大衆化が進行する当時の小説読者と重なり合って見えてくることに着目する。テクストが生来的に内包する私的関心が、法という公的次元とどのように交わり合っているかを考察することで、最終的にモダニズムへと至る小説の語りの発展が、大衆の影響力の増大、さらには読者の大衆化と密接に結びついたものであることを立証する。
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研究実績の概要 |
研究初年度にあたる本年度は、Elizabeth Gaskell, Mary Barton (1848)の法廷場面を主要な分析対象とし、法や大衆にまつわる社会の変化が小説の語りの形成にどのような影響を及ぼしたかについて検証した。具体的には、家庭的愛情や恋愛ロマンスを軸とする私的プロットと法的正義の運行を軸とする公的プロットの関係に注目しながら、両者が最終的に統合されるという従来の見方とは異なり、むしろ両者の関係が分断によって支配されることを見いだした。また、群衆として描写される法廷の傍聴者が、各々の期待する恣意的なドラマを裁判に見いだそうとする描写に着目し、そこでも小説の私的プロットとの間に分断が生じていることを確認した。最終的に、ネイションの外部への退出を余儀なくされるエンディングを見据えながら、小説が法や大衆にまつわる当時の社会的現実との間に抱えている分断が、語りの形成に際して大きな影響を及ぼしていることを論証した。この結論は、本研究課題が主題としている大衆社会の拡大とフィクションの語りの発展との因果関係解明に際して、有益な進展をもたらすものとなった。研究成果は「『メアリー・バートン』における法廷の群衆と小説の語り──ネイションとの分断と統合」として、日本ギャスケル協会第35回大会(2023年10月8日)シンポジウムにて口頭発表した。 また本年度はあわせてJoseph Conrad, The Secret Agent (1907)における群衆描写に着目し、当時のリテラリー・マーケットにおける小説読者のあり方の変遷が、フィクションの語りの形成にどのような影響を及ぼしているかについての成果発表を行った(The Conradian 48.1)。これは群衆社会の拡大とフィクションとの関連について探ることを目的とした研究であり、本研究課題の主題と密接な関連を有するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヴィクトリア朝初期から20世紀初頭までを研究対象期間とする本研究課題では、当該時期の複数作家についての分析考察を行う計画を立てている。本年度はそのうち当初より予定していたElizabeth Gaskell, Mary Bartonについての研究を実施することができた。また実際の研究活動に際して、同作品をCharles Dickens, Oliver Twistや、Joseph Conrad, Lord Jim、E. M. Forster, A Passage to Indiaと比較対照する十分な見通しも得ることができた。 資料収集にあたっては、購入とオンラインデータベースを主体とする研究活動によって必要十分な成果を得られた。そのため当初本年度に予定していた国内出張による資料収集は、次年度の海外出張時にあわせて実施することを見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度についてはCharles Dickensの小説作品、具体的にはOliver Twist (1839)、Old Curiosity Shop (1841)、Bleak House (1852)における法廷描写の分析を中心的に実施し、Conrad, Lord Jimにおける海事裁判や、Forster, A Passage to Indiaにおけるレイプ裁判との比較対照を行う予定である。また本年度の研究遂行中にWalter Scott, The Heart of Midlothian (1818)、George Eliot, Adam Bede (1859)、Felix Holt (1866)、Anthony Trollope, Orley Farm (1862)、Wilkie Collins, The Law and the Lady (1875)における法廷描写にも注目する必要を認めたため、次年度以降に必要な一次・二次資料の収集を行い、随時分析考察に着手する。あわせて次年度にイギリス・ロンドンへの出張を実施し、ヴィクトリア朝期の法廷や裁判に関連する一次資料を収集する予定である。
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