本研究では社会的弱者としてのゼルダ・フィッツジェラルドに注目する。彼女の夫スコットは作家としての地位を確立する過程で、その作品にゼルダの文章を利用し、それを剽窃だとする彼女の告発は無視された。スコットの作家活動への彼女の貢献の全容は未だ解明されていない。また、ゼルダの作家活動の認知度は低く、彼女自身の<声>は断片的にしか検証されていない。本研究は夫妻の作品・日記・手紙類のテクスト分析を行なうとともに、モダニズム期の社会状況や出版状況の研究・分析を通して、ゼルダの声の搾取を引き起こしたジェンダー観や市場原理の仕組みの解明に取り組みつつ、ゼルダのスコット文学への貢献の全容の整理・解明を目指す。
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