研究課題/領域番号 |
23K00402
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
竹内 勝徳 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (40253918)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ハーマン・メルヴィル / 終末論 / 資本主義 / キリスト教 / ミレニアリズム / マックス・ウェーバー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はハーマン・メルヴィルの文学におけるキリスト教と資本主義の関係を考察することで、19世紀のアメリカ帝国主義がプロテスタンティズムと連動する中でいかなる形で経済を発展させ、それがどのような展望を持って20世紀のグローバル資本主義に結び付いたのか、そして、その歴史的潮流においてメルヴィル文学がどう位置付けられるのかを明らかにするものである。とりわけ、同種の観点からアメリカ資本主義の発展を分析したマックス・ウェーバーを批判することで、メルヴィル文学を読むための新たな視点を提供したい。
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研究実績の概要 |
今年度は「ソローとトウェイン ―口承文学の系譜」(『ヘンリー・ソロー研究論集』49号、66-74、2024年1月)を出版し、「思想家を通してメルヴィルを語る―スパノス、アガンベン、『ビリー・バッド』」(日本メルヴィル学会年次大会、2023年9月)、そして、「終末論としての“Billy Budd”」(九州アメリカ文学会9月例会、2023年9月)を口頭にて発表した。いずれもメルヴィルの資本主義とキリスト教研究から生まれた、アメリカ史を貫く黙示録的終末論やそれと強く関わるアメリカ例外主義についての考察が生かされている。さらに、その延長線として、共編著書『アメリカ文学における終末論的想像力ーアメリカ例外主義の行方(仮題)』の出版準備に入っている。九州の研究者を中心に、19世紀から21世紀までのアメリカ作家を中心に、どのような歴史的経緯によって終末論が生じ、それが300年以上の期間を通じてどのように変化し、どのように波及したかを網羅的、立体的に研究するものである。特に、最近のロシアによるウクライナ侵略をめぐる世界情勢において、「第3次世界大戦」という言葉が使われる状況を考慮し、19世紀までの黙示録的終末論が現代ではいかにして「第3次世界大戦」という終末観やそれを理由とした核抑止論に結びついたのかという点が非常に興味深いと考えている。本書は9月末までに出版する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度中に、ウェーバーの『プロテスタントの倫理と資本主義の精神』やそれを批判したマニュエラ・ボウサの『西洋中心主義を超えてグルーバルな不平等へ』(2015)やアンドルー・ツィマーマンの『アフリカのアラバマ』(2012)などウェーバー思想を更新する研究者の著作を読む、また、アーネスト・リー・チューブスンの『救世主の国家』(1968)、ジェイムズ・H・ムアヘッドの『アメリカの黙示録』(1978)などアメリカの宗教史を読む、そして、トマス・レイク・ハリスの著作を読むという計画はほぼ達成できた。ただ、副研究科長としての職務が大幅に増加したために、海外出張が実現しなかった。そこについては、今年度にしっかりと取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、まずは共編著書の出版に向けて全力を尽くすつもりである。この図書の趣旨は、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけとした戦争の長期化により、第3次世界大戦という言葉が使われるようになった状況において、危機の時代にうごめくプロパガンダや覇権国家のイデオロギーを読み取ること、そして、終末という概念を演ずることで支配的権力を拡大しようとする政治的な動きを分析し、その正体を暴くことである。 この背後には旧式武器の処分やその後の軍需産業の活性化などが透けて見える。これらの基盤にあるものはアメリカを中心としたグローバル資本主義によるあくなき利潤追求の姿勢であり、それと組み合わさるアメリカ例外主義の強固な伝統である。アメリカ文学の歴史はその植民地時代を含めて、アメリカ例外主義と絡み合い、それに立ち向かってきた。アメリカ例外主義とは、アメリカは神に選ばれた自由と民主主義を標榜する、大洋に挟まれた例外的な近代国家であり、世界の民主化を主導する義務があるという考え方である。それはプロテスタントの教義によって強化され、国家の根幹をなし、黙示録的な終末を演じることで、アメリカを帝国化してきたと言える。 本書は、アメリカが体験してきた危機的状況の中で、不安や恐怖、それらの克服のプロセスを、作家がいかに描いてきたのかを読み解き、併せて、そうした危機的状況やそれに乗じた終末論的プロパガンダ、あるいは、それと絡み合うアメリカ例外主義の展開と分裂などを視野に入れて、アメリカの文学作品がいかなる意義を生成してきたのかを読み取るものである。
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