研究課題/領域番号 |
23K00404
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
中地 幸 都留文科大学, 文学部, 教授 (50247087)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ジャポニスム / 南太平洋 / 野口米次郎 / 植民地主義 / プリミティヴィズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は19世紀後半から20世紀初頭にかけてのアメリカのジャポニスムとジャポニスムのうねりの中で国際詩人として英米の文壇に登場しながらも1930年代以降国粋主義的なトーンを強めていく野口米次郎について「南太平洋」を鍵としながら考察するものである。ジャポニスムが興隆する19世紀後半は欧米の作家・芸術家たちが南太平洋に強い関心を持つようになった植民地主義の時期とも重なる。一方で、明治期より日本政府の眼差しも太平洋の島々に注がれ、日本は帝国主義的な傾向を強めていく。本研究はジャポニスムと南洋の関係を解き明かし、より広いコンテクストの中に野口米次郎を位置づけていこうとするものである。
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研究実績の概要 |
ジャポニスム文学と南太平洋言説の関連資料調査として、2023年度は国外では、ニュージーランド、ポーランド、フランスにて調査を行った。ニュージーランドでは、ロンドンで野口米次郎が英文エッセイを投稿した同じ雑誌に同時期に原稿を寄せていたキャサリン・マンスフィールドの作品他、当時ニュージーランドがどのように描写されていたのかについて調査したほか、ニュージーランドのジャポ二スムについても資料収集を行った。マンスフィールドの生家の装飾に明らかにジャポニスム的要素があったことも重要な発見となった。東欧は日本の幽霊談や権八小紫の物語に早くから関心を示した作家がいた場所だが、ポーランドは宗教的にはカトリック信仰の強い国であり、調査する中で、日本文学受容において宗教は一つの鍵となるといえるのではないかと推測するようになった。この点はキリスト教徒でありながらも日本に強い関心を抱いたジョン・ラファージやアーネスト・フェノロサについて考える上でも重要となるので、今後とも探求していきたい。パリでもジャポニスム関連資料をプリミティヴィズムを焦点としながら調査することができた。また野口米次郎とも関係の深いチャールズ・ストッダードの作品について精読し、宣教師たちの役割を軸にジャポニスムと南洋言説を考えていく視点の導入が大切であるということにも気がついた。論文としては、以前から調査し続けているネラ・ラーセンの伝記的調査を大学紀要に発表した。また中央大学英米文学会において「アメリカのジャポニスム小説の成立と発展」という講演を行った他、ハワイ大学の吉原真里氏をアジア系アメリカ文学研究学に招待し、その作品を討論した。さらに2022年に出版された『ジャポニスムを考える』に寄稿した論文の英訳がアムステルダム大学出版から出版できることになり、その英文原稿の作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目として、研究は順調に進んでいる。初年度はジョン・ラファージについての文献をほぼ入手し、日本についての旅行記と南太平洋の旅行記を比較できるようになった。またアメリカ作家の視点としてジョン・ストッダードの小説についての調査も順調に進んだ。プロジェクトの1年目として、まずは広く調査する必要があるために海外での資料収集に力を入れた。
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今後の研究の推進方策 |
調査の中で、ジャポニスムと南太平洋というテーマからは少し外れるものの、ジャポニスム文学の根幹的な問題を提示するテーマが見つかったので、今後、その点も含みながら研究を進めていくつもりである。また日本と南太平洋の島々については、欧米視点において結びつけられていただけでなく、日本の神話の中にもそのつながりを読み解けるものがあるということを宗教学および文化人類学の研究者の視点から理解することができた。『日本書紀』に登場する天香香背男(あめのかがせお)という星神への信仰など、野口米次郎や中島敦の南太平洋言説を考えて行く上では、念頭においておかなければならないものである。文学・芸術という限られた領域だけではなく、その背景となる宗教や文化的な点にもさらに目配りをしながら、今年度以降の研究を進めていきたいと思う。
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