研究課題/領域番号 |
23K00413
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
|
研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
金澤 哲 京都女子大学, 文学部, 教授 (70233848)
|
研究分担者 |
森 有礼 中京大学, 国際学部, 教授 (50262829)
相田 洋明 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (70196997)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
|
キーワード | スノープス / クィア / 冷戦 / モダニズム / ポストモダニズム / アメリカ南部 / フォークナー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はウィリアム・フォークナーの全創作期を通じて登場するスノープス一族に注目し、従来軽視されてきた喜劇性・政治性を指摘するとともに、特にその queerness に階級的分断社会を乗り越える政治的契機を見出そうとするものである。
|
研究実績の概要 |
計画1年目であり、最終目標である論集出版の体制を整備するために研究会を組織するところから始め、研究代表者・分担者を中核に、フォークナー文学および冷戦期研究において実績あるメンバー12人からなる研究会を立ち上げることができた。今後はこの研究会の活動を主軸に、「スノープス」という一筋縄ではいかないテーマに多様な角度から検討を加えていく体制が整った。 今年度の具体的な活動としては、前年度末の準備会のほか、8月と3月の研究会で4人から発表があり、メンバー全員で意見交換を行った。その結果、スノープスというテーマが想定以上に多様なアプローチを許容するものであり、1930年代のモダニズムから50年代以降のポストモダニズムへの変遷を視野に入れる必要があることが明らかになった。 一方、当初からの想定通り、「スノープス」は50年代のフォークナー全体像との関連から議論されるべきであり、そのためには「クィア」概念からフォークナーの人種・セクシュアリティ・階級に関わる政治性をとらえなおすことが必要であることが確認された。言い換えれば、「スノープス」を考えるとき「クィア」という概念は性的な事柄だけではなく、人種・階級的な事柄にも有効であることが、明らかになった。この点は研究計画の基礎となった認識であるが、研究会においてその認識を共有できたのは今後の進展のために重要な成果であった。 また50年代フォークナーについて考える際には、冷戦期文化研究との関連からの視点が不可欠であり、「スノープス」を50年代文化に潜在する「クィア」と冷戦という観点から分析する必要も指摘された。この指摘は「スノープス」研究を、たとえばフォークナーの来日と関連づけて議論する可能性を示唆していると言える。この点については、今後さらに追求していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿う形で研究会を組織し、2回にわたって研究会を開催した。計画では年4回の予定であったが、日程調整の関係から1回の時間を延ばし、計4人の発表と議論を行うことで、計画通りに進展させることができた。 計画最終年に国際セミナーを開催する予定であり、招待する研究者に変更が生じたものの、すでに来日の内諾を得ており、準備は順調に進んでいる。 「スノープス」というテーマの広がりと重要性は、想定通りであったが、その点を研究会で具体的に確認し、さらに「クィア」な政治性と関連づけた多様な議論に目処をつけることができた。 以上から、ほぼ計画通りに順調に進んでいると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度の成果を踏まえて、研究会を主軸に「スノープス」の多様性を、特に拡大的な「クィア」の観点から調査していく。 また研究計画では最終年の2025年度に Southeast State University の Christopher Rieger 教授を招くはずであったが、 Rieger教授の転職に伴い実現が困難となった。その代わりに2025年度にアメリカから長くフォークナー研究を主導してきた University of Mississippi の Jay Watson教授を招き、公開ワークショップを開く方向で調整する。すでにWatson教授からは内諾を得ており、今後は日程やプログラム等、具体的な準備を進めていく。 また本研究は最終的に研究会での議論をベースに論集を発行することを目指しており、今年度からはその分担を意識しつつ研究会で議論を重ねていくことにする。
|