研究課題/領域番号 |
23K00414
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
川島 健 同志社大学, 文学部, 教授 (60409729)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | イギリス文学 / 1970年代 / 1980年代 / 若さ / 階級 / ジェンダー / 怒れる若者たち / 男性性 / 1970年代~80年代 |
研究開始時の研究の概要 |
イギリスでは1950年代から60年代にかけて若者が文化の推進力であった。福祉国家、社会保障制度の確立による豊かさが、ベビーブーム世代の若者を社会の前面に押し出した。そのような潮流を背景に「怒れる若者たち」の文学は、しぶとく残る階級意識に苛立ち、家庭的価値観を押しつけられ、やり場のない男性性を持て余す若者の苛立ちを描き出した。「怒れる若者たち」の反抗の激しさたいして、70-80年代の文学は活気がないと評されるのが常だ。しかしそれは評価の座標がないことが原因と考えられる。本研究は70-80年代の若者表象に注目し「怒れる若者たち」の延長線に置く。「怒れる若者たち」の概念を再検討することが目的である。
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研究実績の概要 |
本研究は1970年代から80年代のイギリス文学を若者文学の観点から再考することを目的にする。2023年度は、ジェンダー的観点に絞り、男性性と女性性の変容を記録するような文学作品の読解と分析にあてた。1950年代後半から60年代前半にスキャンダラスな注目を集めた「怒れる若者たち」は男性的「怒り」を露わにし、感情を増幅することで連帯を訴えた。そこでは「若さ」と「男性性」は「怒り」として発露にする。 2023年度の研究では、1960年代末以降、怒りを媒介にしないような「男性性」の表象が顕れることが分かった。具体的にはJohn Wain. A Winter in the Hills (1970), Martin Amis. The Rachel Papers (1973), John Fowles. Daniel Martin (1977) などである。これらの作品では、1960年代の若者文化がもたらした経済的な繁栄のおかげで、階級格差への苛立ちは後景に置かれている。相対的な豊かさが共通の土台となるなか、自らの利益を引き出す「ハック」が、成長の指標となることが判明した。それはときに社会的倫理に反するものとなり、登場人物をピカレスク的に肉付けすることになる。 一方、女性の成長を描く作品の分析も行った。Margaret Drabble. A Summer Bird-Cage (1963), The Millstone (1965), Nell Dunn. Up the Junction (1963)とPoor Cow (1967)を対象に、女性の成長を描くのにどのような尺度が用いられているか分析した。女性の成長を描く際には特に消費行動が大きな指標になることが分かった。どれだけ買うか、なにを書くかが、女性の精神的成熟度を測る尺度になるのだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年9月から在外のためイギリス、ケンブリッジに滞在している。研究に専念できる環境にあるが、引っ越しの作業等で一時的に研究がストップしてしまった。また、戦後イギリス演劇にかんする研究プロジェクトも同時並行で行っているため、本研究との労力と時間の配分に苦心をしている。しかし、現在は自分のペースを確立し、研究は順調に進められていると思う。このままの状態を維持し、研究を進めていけば、予定通りの成果を収めることができるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は前年の研究を継続し、1970年代から80年代の小説をジェンダーの観点から分析していく。特にMargaret DrabbleやA. S. Byatt、Doris Lessingの小説を、消費と成長の観点から考究していく。また1960年代末から現れたイギリス小説衰退論を分析する。David Lodge.“The Novelist at the Crossroads” (1969), 文芸雑誌Grantaが主催したシンポジウム“The End of English Novel” (1980)の記録を精査する。これらの論が具体的にどのような問題を指摘しているのか詳らかにしたい。
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