研究課題/領域番号 |
23K00417
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
橋本 知子 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (60625466)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | フランス文学 / 19世紀 |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀フランス文学における視覚体験が同時代科学(生理学、眼底鏡などの光学技術)とともに変化していく様相を「網膜」に着目することで再検討し、それまで夢や想像力の領域にあった「幻視」という主観的視覚が、文学作品内において外界からの光の刺激から生じる感覚として生理学的に説明され、客観化・実証化されていく過程を明らかにする。また疑似科学からの影響(1870年代の網膜光像実験など)をも考慮に入れることで文学的想像力が「偽りの科学」に依拠しつつ作品を生み出すに至ったという逆説性に注目し、科学とは異なる方法でどのように感覚器官を描いているかを考察する。
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研究実績の概要 |
歴史的文脈の分析、および、作品読解を中心に行い、網膜にまつわる19世紀後半の科学言説がどのように文学作品に反映しているかを考察した。特に、世紀末の視覚文化に関係する資料を、フランス語圏と英語圏の双方から収集することで、多角的に問題を検討するようにした。 夏期長期休暇を利用してパリに滞在し、フランス国立図書館にて資料調査を行った。またフランス人研究者と情報交換を行い、研究計画の方向づけに役立てた。 この文献収集を元にしてフランス語論文 (Epreuve sensible, ou comment exposer une image retinienne ?Optogramme dans Les Freres Kip de Jules Verne)を執筆。査読つき投稿論文として2023年10月に刊行された。対象としたのは、科学小説の作家ジュール・ヴェルヌの作品群のなかでも取り上げられる機会の少ない作品であり、新たな読みを提案することでヴェルヌ研究に貢献できたものと考える。 19世紀前半の生理学における議論を概観し、それが同時代フランス文学にどのような影響となって表れているかを、視覚文化史との関係をも踏まえながら共時的・通時的に分析するものであり、作家たちが医学を創作の源泉としつつも網膜上のイメージという主題を詩的言語によっていかに描いていたかを明らかにした。 また先行研究を整理し、特にここ数年のフランス語圏で発表された論文を取り入れ、また採択者独自の視点からこの問題を問い直した。他の研究者から講評をえる機会があり、今後さらにこの研究テーマを深めるための礎とすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大々的な文献収集を行い、19世紀の生理学に関係する先行研究、および、19世紀末から20世紀初頭にかけての視覚文化にまつわる先行研究を中心に資料調査を行った。それをもとにして査読つきフランス語論文(題名:Epreuve sensible, ou comment exposer une image retinienne ? Optogramme dans Les Freres Kip de Jules Verne)を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して先行研究の文献収集を行い、情報収集をさらに徹底させる。また対象とする文学作品を前回とは異なる時代、特に後続する世代の小説に絞ることにより、科学言説と文学言説の関係性の変遷を明確化するようつとめる。
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