研究課題
基盤研究(C)
19世紀フランス文学における視覚体験が同時代科学(生理学、眼底鏡などの光学技術)とともに変化していく様相を「網膜」に着目することで再検討し、それまで夢や想像力の領域にあった「幻視」という主観的視覚が、文学作品内において外界からの光の刺激から生じる感覚として生理学的に説明され、客観化・実証化されていく過程を明らかにする。また疑似科学からの影響(1870年代の網膜光像実験など)をも考慮に入れることで文学的想像力が「偽りの科学」に依拠しつつ作品を生み出すに至ったという逆説性に注目し、科学とは異なる方法でどのように感覚器官を描いているかを考察する。