研究課題/領域番号 |
23K00429
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
辻川 慶子 白百合女子大学, 文学部, 教授 (80538348)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 大衆文化 / メディア / ロマン主義 / ネルヴァル / レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ / 小ロマン派 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、19世紀前半の大衆文化とメディアの問題を、小ロマン派の作家を通して、総合的に検証することを目的としている。具体的には、①大新聞とは異なる小新聞、虚報、暦書、小冊子などの大衆的印刷媒体の数量・質的調査、②小ロマン派を中心とした作家(ネルヴァル、ノディエ、ミュッセ、ゴーチエ)における大衆文化とメディアの関わりをめぐる文学分析、③大衆文化とメディアに関わる文学場の特徴と社交性に関する社会学的分析、の3点に焦点を絞り、検証を進める予定である。メディアに関する歴史実証的調査と具体的な文学作品分析とを合わせることで、これまで死角となっていた19世紀前半の文芸事象を明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、フランス・ロマン主義時代における大衆的メディアに関する数量および質的調査、ロマン主義作家の調査を踏まえ、19世紀前半の大衆文化とメディアの問題を総合的に検証することである。 2023年度は、大衆文化とメディアに関わる基礎調査と研究ネットワークの構築のため、国内外の研究者による講義や公開講演会を複数開催した。「19-20世紀の大衆小説」に関する宮川朗子、安川孝の講義、「バロック音楽と大衆文化」に関する西山まりえの講演コンサート、公開講演会「プルースト『失われた時を求めて』における庶民の言説」(吉川一義)、公開講演会「連続物の文化:大衆メディア的フィクションの詩学と美学」(マテュー・ルトゥルヌー)、第一回研究会「「大衆文化とメディア:19-20世紀フランス文学と大衆文化」(大橋絵理、杉浦順子)、公開講演会「1840年から1880年へ:大衆文化とメディア文化の間の小説」(クレール・バレル=モワザン)と、計2回の講義、1回の研究会、計4回の公開講演会(内2回の国際講演会)を開催(主催・共催)した。 他方で、ロマン主義作家と大衆文化の関わりについて研究を進める中で、テオフィル・ゴーティエと大衆文化の関係について調査を行い、『死霊の恋/化身』解説に成果の一部を発表した。また、19世紀に「民衆作家」として再評価されたレチフ・ド・ラ・ブルトンヌについて研究を行い、論文を執筆した。この論文は、国際学術誌であるEtudes retiviennes第55号(共編)に発表した。また、一般読者向けイベントである「「どぶ川のルソー」と呼ばれた男ーはじめてのレチフ・ド・ラ・ブルトンヌ」にも登壇した。さらに、ロマン主義時代における大衆的メディア、主にアルマナ(年鑑)の調査を行うため、夏季休暇を利用してフランスに滞在し、フランス国立図書館などで資料調査を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究において、初年度は、基礎的調査の実施として、基礎文献の収集、フランス国立図書館における資料収集を行い、国内外の研究者を招聘した研究会・講演会を2, 3回開催することを予定していた。 基礎的調査の実施は予定通りに進展している。さらに、テオフィル・ゴーティエ『死霊の恋/化身』(光文社古典新訳文庫)の解説と年譜の依頼を受け、急遽、ゴーティエと大衆文化の関連についての調査を発表する機会を得た。また、Etudes retiviennesにおける論文は計画より早期の刊行となり、また2022年度に開催したレチフ・ド・ラ・ブルトンヌに関する公開講演会記録も『言語・文学研究』(白百合女子大学言語・文学研究センター)とほぼ同時期に刊行することができた。このため、合わせて研究成果を公開でき、19世紀を中心とした研究者のフィードバックを得る上で非常に有用であった。 さらに今年度は、公開講演会開催(主催・共催)や公開イベントの依頼が相次いだため、当初の計画以上に多くの講演会やイベントを開催し、学術交流を推し進めることができた。第1回研究会、宮川朗子(広島大学)、および安川孝(白百合女子大学)の講義、マテュー・ルトゥルヌー(パリ・ナンテール大学)の公開講演会開催は計画通りのものであったが、西山まりえ、吉川一義(京都大学)、クレール・バレル=モワザン(CNRS)の公開講演会が追加となった。また、一般読者向けイベントである「「どぶ川のルソー」と呼ばれた男」も計画外の企画であったが、登壇者である藤田尚志(九州産業大学)、森本淳生(京都大学)、および対面・オンラインで視聴した研究者や視聴者と活発な議論を交わすことができた。これらの公開講演会やイベントを通して、豊かな学術交流を行うことができ、今後の共同研究や翻訳などについても計画を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、引き続き、①レチフ・ド・ラ・ブルトンヌとロマン主義作家たち(ネルヴァル、サンドなど)との関連、②ロマン主義時代における大衆文化とメディア、という二つの研究テーマに沿って調査を進めることを計画している。①に関してはレチフ『パリの夜』とネルヴァル『十月の夜』を比較分析し、Etudes retiviennesに論文を寄稿する予定である。②に関しては、主にアルマナ(年鑑)という大衆的刊行物に着目し、ロマン主義時代におけるアルマナの数量・質的調査を進め、データベース作成の作業を開始する。さらに、ネルヴァルとアルマナの関わりについて調査分析し、ロマン主義時代の作家と大衆メディアの関係についても考察を深めたい。 さらに、2023年度に行なった公開講演会などの成果を取りまとめ、『大衆文化とメディア』と題された論集として刊行したい。本論集では「大衆文化とメディア」をめぐる問題の射程を探るためにも、フランス・ロマン主義時代に限定せず、19-20世紀の大衆文化、映画・アニメーション・食という多様なメディアも対象とする。 さらに、2024年9月には、国際シンポジウム「日本とフランスにおける大衆文化とメディア」の開催計画を進めている。17-19世紀における「労働者詩人」を対象とした歴史学の大著Le Menuisier de Nevers. Poesie ouvriere, fait litteraire et classes sociales (XVIIe-XIXe siecle)(EHESS/Gallimard/Seuil)を刊行した気鋭の歴史研究者ダイナ・リバール(EHESS /社会科学高等研究員)らを招聘し、日本とフランス、文学と歴史学と領域横断的な形で大衆文化とメディアについて論を交わす予定である。
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