研究課題/領域番号 |
23K00433
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
寺尾 隆吉 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80434405)
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研究分担者 |
大西 亮 法政大学, 国際文化学部, 教授 (80328913)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ラテンアメリカ現代小説 / 文学出版活動 / 文学の世界展開 |
研究開始時の研究の概要 |
1960年代のスペイン語圏では、各国で文学作品の売り上げが飛躍的に伸びており、その中核を担ったのがアルゼンチンのスダメリカナ社だった。本研究は、1)作家、文芸批評家、編集者、マネージメントを担当する文学代理人、2)国境を越えて流通する文芸雑誌、3)国際展開する出版社と文化機関、この三者の連携を中心として、1959年のキューバ革命以後急速に影響力を強めた国際的文学ネットワークに注目する。当初から積極的にここに参画したスダメリカナ社がラテンアメリカ人作家の小説作品を国内外に売り出す過程を辿るとともに、出版社の戦略が文学作品の創作と受容にどのような影響を与えたのか、具体的事例をもとに検証する。
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研究実績の概要 |
1960年代におけるスダメリカナ社によるラテンアメリカ小説の刊行に注目し、アルゼンチンの有力週刊誌『プリメラ・プラナ』、文芸雑誌『エル・エスカラバホ・デ・オロ』、ウルグアイの週刊誌『マルチャ』、メキシコの総合雑誌『ウニベルシダッド・デ・メヒコ』、パリから発行されていた文芸雑誌『ヌエボ・ムンド』との連携を詳細に調べることで、世界的な成功を収めるにいたった小説作品の普及プロセスを解き明かした。本研究の初年度にあたる2023年度は、「ラテンアメリカ文学のブーム」の担い手となったフリオ・コルタサルとガブリエル・ガルシア・マルケスに注目し、『石蹴り遊び』と『百年の孤独』をめぐる出版社の販売戦略と、雑誌における宣伝活動を分析した。その研究成果は、2024年5月に勉誠社より出版される研究書『ラテンアメリカ文学の出版文化史ー作家・出版社・文芸雑誌と国際的文学ネットワークの形成』として結実しており、本書に収録された論文「スダメリカナ社の出版戦略とラテンアメリカ文学のブーム――『石蹴り遊び』と『百年の孤独』の刊行」が本研究プロジェクトの第一段階の集大成となっている。本書は、ホルヘ・ルイス・ボルヘスやフアン・ルルフォ、カルロス・フエンテスといったラテンアメリカ文学に名を刻む重要作家の小説作品を題材に、ラテンアメリカ文学における出版と創作の関係性を詳細に調べ上げた画期的研究書となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1960年代の「ラテンアメリカ文学のブーム」を支えた文芸雑誌のPDF公開が進んでいることは研究にとって大きな追い風となっている。研究助手の栗原佑紀子さんの見事な働きにより、研究対象となっている雑誌『プリメラ・プラナ』、『ムンド・ヌエボ』、『エル・スカラバホ・デ・オロ』に掲載された文学関連記事をデータベース化できたことで、研究が格段にスムーズに進むことになった。また、コロナ禍が開け、ブエノスアイレスに渡航できたことで、現地の研究者と作家から直接話を聞くことができたうえ、必要に応じてメール等で研究に関する問い合わせができるようになった。資料収集に際しては、在アルゼンチン日本大使館の協力も得られており、おかげで普通には入手困難な書籍を多数入手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
マヌエル・プイグやフアン・ホセ・サエールといった研究対象の作家とスダメリカナ社との関係については、資料の収集がはかどっておらず、まだ具体的な分析が進められていない。2024年3月のアルゼンチン滞在で、現地の作家と研究者の協力を取り付けることができたので、今後は彼らを頼りに資料収集を進め、彼らの助言を仰ぎながら研究を進めていく。雑誌については、そのデータベース化をかなり進めることができたが、20世紀半ばのアルゼンチンで影響力を持った雑誌のうち、『コントルノ』など、数点についてはまだ手付かずのままになっており、今後調査を行う。また、有力新聞『ラ・ナシオン』や『クラリン」の文芸欄については、資料収集も記事の分析も進んでおらず、有効な研究の進め方を検討せねばならない。すでに、スダメリカナ社を中心とする国際的文学ネットワークの実態についてはかなり明確なイメージを掴むことができているが、さらに詳細な調査と分析を進めることで、このネットワークが創作にどのように影響していたのか、さらに具体的に明らかにしていくことになる。
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