研究課題/領域番号 |
23K00443
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
田中 由樹 (白田由樹) 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (00549719)
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研究分担者 |
高井 絹子 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (20648224)
辻 昌子 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (20771918)
野村 優子 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (50804134)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 装飾芸術 / メディア言説 / 世紀転換期 / ヨーロッパ / ベルギー装飾芸術 / フランス装飾芸術 / ウィーン分離派 / ドイツ装飾芸術運動 / 新聞雑誌メディア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、装飾芸術のつくり手や理念提唱者、購買者や支援者、販売や出版を通じて理念を普及させた者に加えて、装飾芸術の受容と消費を通じて流行の盛衰に関わった人々の動向についても調査と考察を行い、19世紀から20世紀の転換期に各国・地域でおこった装飾芸術運動とその推移にまつわる時代の精神を解明することを目的としている。 とくに大陸におけるアール・ヌーヴォーや分離派、ユーゲントシュティールに関わる言説を分析し、それぞれの傾向を対比する中から、欧州で同時・連鎖的に展開された芸術運動の内的要因を複眼的に捉え、運動と装飾スタイルの盛衰現象を各対象国・地域の文化圏の精神史として位置づけることを目指している。
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研究実績の概要 |
白田は、ベルギーの装飾芸術を支援した自由美学の『現代芸術』誌と労働党の『民衆』紙の記事を精査し、1897年万博のコンゴ展示をめぐって両者の立場が相反していく過程を跡づけた。また、アール・ヌーヴォー130周年記念としてブリュッセルの各所で開催された企画展を訪問し、コンゴ自由国とアール・ヌーヴォーの関係性に関する最近の研究動向を調査した。 辻は、文学と三面記事を巧みに織り交ぜたジャーナリスト作家としてのロランの文体を分析し、その結果、世紀転換期パリにおいて活躍しようとする新しい芸術家たちへのロランの影響力の大きさを確認した。とりわけアンソールやトゥーロップなどベルギーを活動の中心とする芸術家たちが、新聞記事のもたらす大きな恩恵を歓迎すると同時に恐れてもいたという、フランス国外の芸術家たちとパリのメディアの関係性を明らかにした。 高井は、ウィーン分離派の擁護者ベルタ・ツッカーカンドルの、新聞や雑誌における言説を追った。彼女は、もともとウィーン工芸を活性化するために輸入されたイギリス様式を指す「最新の」という意味合いの言葉「モデルネ」を、数年後には自分の記事の中でウィーン工房の製品に使用しはじめる。高額な製品を注文する経済市民層とはまた別の、教養市民層に属する人物によるウィーン分離派支援のあり方を確認することができた。 野村は、美術商ビングと美術批評家マイアー=グレーフェの言説を追うことで、ドイツにおける装飾美術への関心の高まりが1895年頃にあることを確認し、その背景にある要因として、リーバーマンらによるモダニズム運動のほかに、19世紀後半に各都市で設立された美術工芸博物館と美術工芸学校の活動と、ヴィルヘルム2世即位による拡張政策への路線変更が関わるのではないかと予測して考察を進めた。 また、各研究課題の進捗を報告し、今後の活動や成果公表について話し合うため、定例研究会を3回、開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者・研究分担者ともに、ほぼ研究計画どおりの研究調査や分析・考察を行い、その経過報告や成果を研究発表、論文・研究ノートの形で公表するとともに、翌年度の論文執筆や調査に向けた準備もできているため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究代表者・研究分担者ともに設定した研究計画に沿って調査活動や考察を進める(現在のところ、計画に大きな変更はない)。またその進捗報告と、今後の方針をすり合わせるための研究会を定期的に開催するとともに、各々の対象地域や装飾芸術のテーマに関連する研究者をゲストスピーカーとして招き、成果公表としての共著書企画の内容について、より具体化させながら、協力体制を構築していく。
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