研究課題/領域番号 |
23K00451
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
真田 桂子 阪南大学, 流通学部, 教授 (60278752)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 翻訳研究 / 言語越境 / 仏語圏文学 / ケベック文学 / ナンシー・ヒューストン / ジャック・ブロー / 翻訳の詩学 |
研究開始時の研究の概要 |
多元化し複数化する現代世界で「翻訳」は重要な役割を担っており様々な方面から研究が進んでいるが、本研究では特に「翻訳」の文学における芸術性や創造性に注目する。「翻訳の詩学」と呼ばれるケベックで生まれた翻訳論を拠り所に、仏語圏におけるジャック.ブローやナンシー・ヒューストンなどを中心に、自ら翻訳実践を行い、それを自らの創作活動に転化し、他者への迂回による自己相対化や自己翻訳による文体の錬磨など独自の美学的効果や創造的変容を生みだしている作家の作品を具体的かつ詳細に検証し、世界文学の変容を促す「翻訳」ならびに言語越境性の芸術性や創造性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、ケベックを中心とするフランス語圏文学において「翻訳の詩学」と称される翻訳理論ならびに翻訳実践を通して、それが創作活動にいかなる創造的かつ美学的効果をもたらしているかを明らかにしようとするものである。とりわけケベックの詩人ジャック・ブローは、英語の詩作品のフランス語への翻訳を精力的に行い、その過程から生み出された言語の創造的逸脱やイメージの転嫁を、自らの創作活動に積極的に反映させている。2023年度は、このブローの翻訳実践に注目し、ケベックの翻訳研究の第一人者であるシェリー・シモンによって提示された翻訳理論である「翻訳の詩学」について詳細に検証することをめざした。 2023年度の主要な研究業績としては、11月にオンラインで開催された韓国ケベック学会(ACEQ)年次大会に招聘され、La poetique de la traduction chez Jacques Brault et la litterature japonaise と題された仏語による研究発表を行った。この発表内容について、討論者のACEQ会員で仏韓語の翻訳家より極めて有益な示唆がもたらされ、ブローの翻訳実践と「翻訳の詩学」が内包する普遍性と独自性が明らかになった。 また2023年9月にはケベックに研究出張を行い、モントリオール大学を拠点に資料収集と当該研究の専門家へのインタビューを行った。とりわけシェリー・シモン氏からは、「翻訳の詩学」とその背景となったケベックの社会的状況についてのレクチャーを頂き, 極めて有益な知見を得た。さらに翻訳研究の専門家であるシェルブルック大学教授のP.ゴブー氏とも意見交換を行い、当該研究の新たな重要なコーパスとなりうる、英仏語で作品を遺した著名な歌手で詩人のレオナード・コーエンについて、興味深い示唆を得るなど大きな収穫があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、これまで進捗させた研究成果をフランス語論考にまとめ、韓国ケベック学会(ACEQ)にて発表した。発表内容に対してACEQ会員から多くのコメントが出され、とりわけ韓国において仏韓語の翻訳実践を行っている翻訳家から、ケベックの「翻訳の詩学」について、その普遍性を示唆する興味深い見解が示され意見交換を行った。国際的な学会におけるこれらの反響や手応えにより、当該研究の方向性は正しく、新たな展望に向かって進展していることを実感した。 また海外研究出張でのリサーチによって、現地での翻訳研究についての最新の情報や研究対象となる新たな作家のコーパスや方法論についての文献の収集を行なうことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2024年度)は、引き続きジャック・ブローを中心とするケベックの「翻訳の詩学」についての検証を進める。研究対象として、J.ブローと英系詩人E.D.ブロジェットとのフランス語と英語の詩による異色の創作連歌 Transfiguration の分析にも着手する予定である。この作品の解析を通して、翻訳の美学的変容と創造性についての考察を行うが、方法論としてはこれまでの綿密なテキスト分析に加え、可能であればテキストマイニングの手法も導入し、多角的な視点からの検証をめざす。 2024年6月には、カナダのモンクトン大学で開催される国際フランコフォニー学会(CIEF)の年次大会に参加を予定しており、そこでそれまでの研究成果の一部を発表する予定である。
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