研究課題/領域番号 |
23K00457
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
金山 富美 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (80263507)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 科学教育と文学 / 科学的概念と文学性又は精神性 / マリ・パップ=カルパンティエ / フランス(児童)文学 / 教科書 / 自然科学と文学 |
研究開始時の研究の概要 |
フランス19世紀の幼児・初等教育に大きく寄与したマリ・パップ=カルパンティエに関して、その実務家としての事績以上に、むしろユゴーやサンドによって「大人にも学ぶ喜びを与える啓蒙の良書」と称賛された数々の教科書の執筆者としての姿に注目して、彼女が書き下ろした書物に見られる特徴(科学分野と融合する文学性)と社会に与えた影響(理知と自由に拓かれた共和国市民のための教育基盤の構築と伝搬、女性の自立を目指した教育の推進)を解明していく。
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研究実績の概要 |
当該年度は、パップ=カルパンティエ(以下カルパンティエと略記)によって編まれた数ある教科書のなかで、当時まだ初等教育さえも十分享受できなかった女性を対象に書かれた『砂粒の秘密ー自然の幾何学ー』に焦点を当て、本作品を主要テクストとして、作者が科学と文学をどのように融合させようとしたのかについて検討した。なお、本作品は、当時カルパンティエを高く評価し、彼女の死後その業績を讃えた数少ない有識者の一人、フェルディナン・ビュイッソンでさえ否定的にみなした書物であったためか、本書について分析を試みた研究論文はフランス本国でもあまり見られない。 当該年度に手がけた探求の論点としては、まず、保育学校の教師として子供向けの物語を書いてきたカルパンティエがなぜ対象を女性に絞ったこの教本に着手したのか(それは彼女が女子教育の領域に足を踏み入れる第一歩だったと言える)について、19世紀中葉の医学書をはじめとする科学的言説を紐解きながらその理由について問い、次にそこで立てた仮説を、彼女が『砂粒の秘密』という幾何学初歩の読本の扉に記したパスカルとフリードリヒ・クロイツァーからの引用を手掛かりにして本書を精読するところから具体的に証明したことである。この試みを通して、これまでカルパンティエの業績の周辺に置かれてきた『砂粒の秘密』の中に、文学的表現が初学者の何を刺激して彼らを自然科学への眼差しと興味へと誘っていったのかについての一つの解答を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『砂粒の秘密』の分析を通して、パップ=カルパンティエの試みの中に、現代の科学教育初歩で注目されているアナロジーやメタファーの重視と同一視しうる創意工夫を見出すことができた。その結果を論文として執筆し、学会誌(日本比較文化学会)に投稿、審査を経て受理され、当該年度の成果発表を行うことができた(刊行済)。また、カルパンティエの自然科学(博物誌)教育に対する試みの一端が、フランスの音楽教育にも影響を与えていると考えられることを論考にまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
対象とするテクストを拡げ、あらためて詩人でもあったパップ=カルパンティエがいかにその文学的手法を通して庶民の子供や女性をはじめとする初学者に自然科学への目を拓かせ、彼女が考える「共和国市民」としての思考・表現能力を育もうとしたのかについて分析を進める予定である。
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