研究課題/領域番号 |
23K00463
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
置田 清和 上智大学, 国際教養学部, 准教授 (70708627)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | サンスクリット文学 / ヒンドゥー教 / 詩論 / インド思想史 / インド古典 / ベンガル語文学 / South Asia / India / Aesthetics / Hinduism / Bhakti |
研究開始時の研究の概要 |
「神への信愛は美的経験をもたらし得るか」演劇論・詩論の大家アビナヴァグプタ(10世紀)は「信愛(bhakti)は美的経験(rasa)ではない」と結論し、その後の文芸論に大きな影響を与えた。しかし中世後期以降多様な美的経験論が発達する中で、全ての思想家がこの結論に賛同したわけではなかった。本研究ではアビナヴァグプタに反論し「信愛は美的経験であり得る」と主張した13世紀の思想家ヴォーパデーヴァ、へーマードリに焦点を当て、これまであまり注目されなかった10世紀以降の文芸論の発展過程を明らかにする。
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研究実績の概要 |
当該研究は、「信愛に基づいた美的経験(bhakti-rasa)」の概念に焦点を当て、その歴史的発展の課程を明らかにすることを主眼としている。 ・2021年に立ち上げたラサ論研究会を今年度も継続し、前期はボージャ著Sarasvatikanthabharana第5章を、後期は同著者によるSrngaraprakasa第1章冒頭部、11章冒頭部を読み進めた。当該箇所に関しては適宜英訳を作成している。また、23年6月に上智大学において対面のワークショップを開催し、石井裕氏(拓殖大学)と柴優人氏(広島大学)にDhananjaya著Dasarupaka第4章とそれに対するDhanika註Avaloka、そしてVidyadharaによるEkavali第2章をそれぞれ講読していただいた。 ・9月半ばから12月末までインドのコルカタ、シャンティニケタン、ブリンダーヴァンを訪問し、以下の図書館、研究機関で写本調査を実施した:アジア協会、Bangiya Sahitya Parisat, カルカッタ大学、タゴール国際大学(Visvabharati), Vrindavan Research Institute. 調査した写本はヴォーパデーヴァ著『真珠』・へーマードリ註『解脱灯』、ヴォーパデーヴァ著『神的遊戯』・へーマードリ註『神的遊戯考』、マーラーダラ・バス(グナラージ・カーン)著『クリシュナの勝利』などである。 ・オックスフォード大学のRembert Lutjeharms博士との共編書を出版した:The Building of Vrndavana: Architecture, Theology, and Practice in an Early Modern Pilgrimage Town, Brill's Indological Library, Vol. 57 (Leiden: Brill)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・ラサ論研究会での講読を通じ、インド中世、近世において「信愛に基づいた美的経験(bhakti-rasa)」に多大な影響を与えたボージャの革新的かつ難解な思想に迫ることができた。 ・インド長期滞在により、研究に必要な写本を入手することができた。また、インド滞在中カルカッタ大学サンスクリット学部において当該研究のテーマに基づいた招待講演をすることができた。 ・眞鍋智裕氏(北海道大学)、S. Bhuvaneshwari氏(インド・チェンナイ、独立研究者)との定期講読会を通してBhagavata Purana 1.1.1に対するMadhusudana Sarasvatiの註釈を読み進めた。 ・丹羽京子氏(元東京外国語大学)、Naba Gopal Roy氏(Sidho-Kanho-Birsha大学)との定期講読を開催し、マーラーダラ・バス(グナラージ・カーン)著『クリシュナの勝利』における「ラーサの遊戯」の章を英訳した。また東京外国語大学の国際ワークショップで当該部の研究の成果発表を行なった。 ・Mans Broo氏(Abo Akademi)、Aleksandar Uskokov氏(イェール大学)、Kenneth Valpey氏(オックスフォード・ヒンドゥー教研究所)らとBhagavata Purana第10巻のサンスクリット註釈書についてのオンライン講読会を月2-3回程度開催した。
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今後の研究の推進方策 |
・引き続きラサ論研究会を月一度程度の頻度で開催し、ボージャの美的経験論についての理解を深めてゆく。 ・24年度前期はオックスフォード・ヒンドゥー教研究所とハンブルク大学訪問の予定。この期間中に23年度に収集した写本に基づき、ヴォーパデーヴァ著『真珠』・へーマードリ註『解脱灯』、ヴォーパデーヴァ著『神的遊戯』・へーマードリ註『神的遊戯考』のテキスト校訂、英訳作成の作業を再開する。 ・マーラーダラ・バス(グナラージ・カーン)著『クリシュナの勝利』に関する研究の成果発表と出版を目的とした論文執筆を行う。 ・Bhagavata Purana 1.1.1に対するMadhusudana Sarasvatiの註釈のテキスト校訂と英訳作成を継続する。
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