研究課題/領域番号 |
23K00465
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
秋草 俊一郎 日本大学, 大学院総合社会情報研究科, 准教授 (70734896)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 世界文学 / 国語教育 / 国語教科書 / 翻訳 / 比較文学 / 翻訳研究 / 受容 |
研究開始時の研究の概要 |
「国語」教育において、外国文学は戦前より一定の役割を果たしてきたが、戦後、その国語教科書への採録数は顕著に増加した。70年代以降、外国文学作品の採録件数は大幅に低下してしまうことになるが、一部の作品は定番化し、国語教育に一定の役割を果たした(はたしている)と見ることができる。本研究では 戦後、主として検定国語教科書に掲載された外国文学作品を精査することで、国語教科書・教育において外国文学が果たした役割を明らかにする。また、比較文学研究としては、国語教科書が外国文学作品の受容にあたえた役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、戦後の中学校・高校の検定国語教科書に掲載された外国文学作品の調査をおこなった。具体的には、国会図書館やいくつかの大学図書館にくわえ、国立政策研究所教育図書館、教科書図書館、東書文庫、日本教育会館内教育図書館、国立国語研究所、国文学研究資料館、日本近代文学館など各所の専門図書館での教科書の現物調査や、教科書会社が発行していた教員向け教授資料や関連刊行物などといった資料に加え、雑誌『教科書レポート』のような日本出版労働組合連合会が編集していた刊行物を調査した。なお、一部小学校の検定国語教科書や、道徳の副読本・検定教科書の調査もおこなった。またいくつかの教科書会社の厚意にあずかり、資料調査や、教科書の編集に携わった編集者へのインタビュー調査をおこう機会をえた。並行して国語教育学における関連する文献を購入・収集した。また教科書に掲載された外国文学作品については引用元の書籍なども入手した。 こうして得た戦後の検定国語教科書に掲載された外国文学作品についての知見に関して、整理をおこなう意味でも、国語教科書に掲載された外国文学作品についての論文の執筆に着手した。 2023年9月には日本ポー学会において、「国語教科書とポー」と題する講演をおこない、進行中の研究成果の一端を発表し、エドガー・アラン・ポーの専門家からの反応をえられた。 2024年2月には、戦後の国語教科書に掲載された外国文学作品のアンソロジーである共編書『教科書の中の世界文学――消えた作品・残った作品25選』(三省堂)を刊行した。作品の選定だけでなく、まえがきやコラム、解説を執筆し、その中においてもやはり研究成果の一端を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
教科書図書館や教育図書館、東書文庫のような専門図書館における資料調査で戦後の国語教科書についてかなりの数を現物およびデータベース上で閲覧できたこと。同時に、各教科書会社が刊行していた指導書についてもかなりの数を目を通すことができた。こういった資料により、編集側の教材を採用した意図が把握できた。また、いくつかの教科書会社においてインタビューや資料の閲覧などの協力がかなりえられ、文献としては残っていない情報が多くえられたこと。こうしたことにより戦後の中学・高校の国語教科書に掲載された外国文学作品について、どのような作品が、いつ・どれくらい採用されたのか、おおまかな理解がえられたこと、文献や先行研究の読解によって教材史・教材研究史や占領下の検閲や戦後の検定制度についての理解が深まったことなどにより、研究課題は当初の予定よりも大幅に進展している。これらの調査により、次年度になにをしらべたらいいのか(戦前との連続性、他教科との関係性など)が明確になった。 また、調査したことに対するアウトプットも想定以上におこなうことができた。具体的には共編著『教科書の中の世界文学――消えた作品・残った作品25選』(三省堂)の刊行である。また、日本ポー学会の全国大会で講演をおこない、そのための原稿執筆をとおして理解をふかめることができた。2024年度に刊行可能なかたちで、研究をまとめる下準備ができたことも進捗がはかばかしい理由と言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度である2023年度には、戦後の検定国語教科書に掲載された外国文学作品について、どのような作品が、どれくらい掲載されてきたのかについておおまかな理解ができた。研究が進展した半面、研究を深化させるためには、外国文学についてだけでなく、当時やはり教材として使用されていた日本文学作品・文学教材について理解しなければならないという点が浮き彫りになった。これは外国文学作品が、日本文学作品の代替として用いられていたり、日本文学作品と同じ単元に入れられていたりするためである。日本文学教材と外国文学教材との関係を具体的に解き明かす必要がある。 また学習指導要領や検定制度などといった制度的要因がある時期まではかなり作品選定に影響していたこともわかってきた。1945年から52年まではCIEによる検閲もおこなわれていた。こういった点については先行研究や文献資料に加えて、国立政策研究所教育図書館などの所蔵資料を調査したり、教育政策史などを調査する必要がある。 加えて、国語教科書の文学教材には、英語教科書の文学教材とある程度重なる部分があることもわかってきた。英語教科書と国語教科書でどれくらい教材の相互参照があったのかについて調査を要する。このことが解明されれば、同じ教材について、教授法がいかにちがっているのかについて興味深い研究がおこなえるだろう。 また国語教科書の文学教材の中には、のちに道徳の副読本や教科書に掲載されたものもある。こうした点に直目すると、文学教材の道徳性のような問題が浮かびあがってくる。国語―英語や国語―道徳のような教科をまたいだ関連性についてさらに調査を要する。
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