研究課題
基盤研究(C)
本研究課題は、20世紀のイギリス作家ジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』(1949)が、冷戦期東西両陣営において政策および文化現象としていかなる役割を果たしどのような影響力を持っていたのかを、歴史的・理論的に解明しようというものである。具体的には本作品が東側に(1)秘密裏に持ち込まれ、(2)翻訳や海賊版が地下出版として普及した経緯を精査しつつ、(3)東側政府が本作を利用して政策形成に役立てた(つまり、虚構が事実を創出した)という仮説を一次史料と書誌をもとに実証する。さらにこれを西側での状況に相対化することで、現代まで増幅した「オーウェル言説」について文化理論的な立場から再解釈を試みたい。