研究課題/領域番号 |
23K00470
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
鷲見 朗子 京都ノートルダム女子大学, 国際言語文化学部, 教授 (20340466)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 物語文学 / アラビア語 / アラビアンナイト / ミソジニー |
研究開始時の研究の概要 |
千一夜物語(別名アラビアンナイト)と深い関わりをもつアラビア語物語集である百一夜物語には、女の奸智や狡猾さが際立つ一方、それに騙され、取り乱す男の愚かさが示される物語が2つ収録されている。1つは物語集全体の外枠となる枠物語で、もう1つは「王子と七人の大臣の物語」である。 本課題では、枠物語の解釈を基に「王子と七人の大臣の物語」におけるミソジニー的要素およびミサンドリー的な要素の抽出・分析により、これら両性の対比を明らかにする。次に、女の奸智や狡猾さはイスラーム的なジェンダー解釈との関連を追求する。また、百一夜物語のアラビア語写本および校訂本を精査し、テクストの真正性を担保する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は七人の大臣の物語のライデン写本を対象に、調査を進めた。まずは他の写本との差別化をはかるために、収録話について比較分析を行った。 その成果の一部として、令和6年3月16日に京都大学の勝又直也教授の科研費研究の主催と本科研費研究共催で、東京大学で行われた「『タハケモニ』および中世ヘブライ・アラブ物語文学」という題目の国際研究集会に参加し、英語で発表を行った。The Story of the Seven Viziers in the Hundred and One Nightsというタイトルであった。七人の大臣の物語では、8つの写本のうち、ライデン写本に焦点をあて、他7つの写本と比較しつつ考察を行った。その結果、収録話の話順でいうと、8つの写本は大きく2つのグループに分かれることがわかった。グループ1は6つの写本、そしてグループ2は残りの2つで、そのうち1つがライデン写本である。グループ1は20の収録話、話順ともに同じである。グループ2は1よりも物語の数が1、2個多く、話順も後半が若干異なる。ライデン写本は、グループ1と異なる収録話の内容でいうと、ミソジニー(女嫌い)的な主題のものが本来入っているべきでない場所に入っている。このことから、ライデン写本の七人の大臣の物語は、他の写本に比べてミソジニー的要素が強い傾向があることが導きだされた。この集会にはエジプト人でアラビア語写本の専門家や日本人アラビアンナイトの専門家も参加しており、質疑応答でもさまざまな貴重な意見を得ることができた。アラビア語とヘブライ語による研究をひとつの研究集会で議論し、物語や写本に関して、方法論や文献情報、知識を共有できたことも令和5年度の大きな成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まずはライデン写本の七人の大臣の物語の特徴を捉えようと話順を中心にほかの写本との比較考察を行った。その中でほかの写本との比較において話順という点で差異のある物語に焦点をあて、ミソジニーという観点から考察を行ったことは成果であったが、イスラーム的解釈という点では深く踏み込めなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度の調査で判明した、グループ2に分類されるライデン写本に集中し、ほかの写本との差異を比較分析し、ジェンダー論的考察とイスラーム的解釈を引き続き行う。物語テクストにおける「空間」の考察がジェンダー的役割、そしてイスラーム的解釈とも関係している可能性があるため、その主題に関し追求していく。この「空間」を扱う研究論文が、台湾で2024年に開催される国際学会で発表論文としてアクセプトされたので、そこでも研究成果を報告する予定である。
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