朝鮮女性の漢詩文学の作風は時代が下るにつれて、次第に朱子学的文学観が見られ、その最も代表的な詩作が『貞一軒詩集』収録の「太極」の詩である。一方で南貞一軒の詩は「性情の正」として評価され、四季や月令を詠んだものが多く、自然の中にも儒教的観念が投影されていることが重要な特徴と考えられる。 そこで本研究では作者の南貞一軒の四季、月令をテーマとした漢詩を中心に考察する。そのことによって、朝鮮女性の漢詩文学における朱子学の影響を示し、16世紀から19世紀にかけての朝鮮における女性の詩作の歴史的変遷を明らかにする。また四季、月令をテーマとすることで、東アジアの女性漢詩との比較や歳時記研究の理解につなげる。
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