研究課題/領域番号 |
23K00482
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
荒木 典子 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (40596988)
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研究分担者 |
大野 広之 東京都立大学, 人文科学研究科, 客員研究員 (20837257)
小松原 ゆり 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (40782793)
鋤田 智彦 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (60816031)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 満洲語の使用状況 / 満漢並香集 / 大清全書 / 八旗 / 乾隆帝 / 時憲暦 / 地震 / 西廂記 / 乾隆 / 言語接触 / 漢化 / 満洲語力 / 翻訳 |
研究開始時の研究の概要 |
清・乾隆年間は、満洲族の母語忘却が加速した時期として知られる。しかし60年もある在位期間の端々をクローズアップすると、より複雑な状況が垣間見えてくる。例えば、乾隆年間には既に文芸作品の満洲語への翻訳は下火になっていたにもかかわらず、手書きでの再生産が行われていたのである。当時の満洲語の使用状況と、背景にある思想や歴史的事実から、この時期は必ずしも母語忘却一辺倒ではなかったことを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、満洲族の母語忘却が加速した時期と言われる乾隆年間に注目し、実際の満洲語の使用状況、その背景にある思想、歴史的背景を明らかにすることである。荒木・鋤田が満漢翻訳資料における言語の使用実態を担当、大野が乾隆帝の精神世界を担当、小松原が乾隆帝の目指した「国語」の理想を担当する。荒木は、学習院大学東洋文化研究所東アジア共創プロジェクトでの課題から継続して、『満漢並香集』の訳注作成に取り組んだ。訳者尚玉章の来歴、本書の書誌的特徴などを明らかにした。今後は訳語の詳細な検討に取り組む。鋤田は、複数の満文『西廂記』を『大清全書』と比較して、康熙年間以降、漢語由来語彙の排除と固有語への置き換えの傾向があったことを明らかにした。あわせて漢語由来語彙が使用されるかどうかを、それぞれの資料の刊行あるいは抄写年代特定の手がかりとする手法として提示した。小松原は、八旗官僚たちの満洲語力低下に対する乾隆帝の指導および公文書における実際の運用状況について考察した。乾隆50年代、宗室子弟という身分であっても満洲語力の低下が著しい者が存在し、乾隆帝が厳しい指導を行っていたこと、地震発生時の報告書のやり取りから、実用性を重視して満漢文が使い分けられていた実態が明らかになった。今後は、年代を変えて更なる検証を行う。大野は、乾隆帝の精神世界に迫るために、時憲暦の考察を行った。造暦のプロセスには当時の最高レベルの知性が動員され、西洋思想の東漸の流れの中で、統治に資するものを積極的に取り入れた乾隆帝の姿勢が如実に表れている。今後は、乾隆帝の行動が時憲暦に裏付けられたことを明らかにする。併せて、乾隆帝自身の起居生活より関心を持った品茶、書法、藏密・薩満双方による祭祀祈祷についても取り組みを進めていく。 2023年9月、2024年3月に研究会を開催、『清代言語接触研究』第二号を刊行して研究成果を公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度からの研究課題「満洲語文献に基づいた東アジア言語文化史研究」(基盤研究C、19K00578)を、当初の期間より1年延長した。2024年3月まで続けたため、本課題に着手する時間が不足し、発表した研究成果は少ない。しかし、研究成果公開までは至らなかったものの、国内外の出張が再開でき、新たな資料に触れることができた。
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今後の研究の推進方策 |
乾隆年間の言語使用実態と、乾隆帝自身の思想や「国語」政策の実践の二面から考察する。 前者は荒木、鋤田が担当する。まず乾隆年間刊行であることが明らかな資料を取り上げ、その資料そのものの研究、その前後の資料との対比を行う。具体的には乾隆2年の序をもつ『満漢並香集』や『清文鑑』をはじめとする辞書類である。『満漢並香集』は全文の訳注を作成中である。その結果を応用し、成立時期が不明である写本の年代の特定も試みる。 後者は大野、小松原が担当する。小松原により、乾隆帝の満洲語指導の時期による傾向が見えつつある。引き続き、満文の寄信上諭や奏摺を利用することで、漢文史料からは見えてこない乾隆帝自身の動向を把握し、その行動と暦術思考の関連を明らかにする。 研究成果公開の場として、年に二回の定例研究会を行い、年度末には『清代言語接触』第三号を発行する。
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