研究課題/領域番号 |
23K00484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
金子 百合子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (80527135)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ロシア語 / 対照言語研究 / 品詞 / アスペクト |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はロシア語と日本語の対照言語研究である.以下の3点に取組む.1. 事象の描写に用いられる動詞表現と名詞表現を量的・質的に分析し,各対象言語における事象の動態的把握(動詞)と静態的把握(名詞)の表現の使用実態を調査する.2. 対象言語間に見られる動詞表現と名詞表現の振る舞いの差異が,各言語において事象のアスペクト的解釈およびテクスト解釈に与える影響を考察する.3. 事象(動詞)のアスペクト的限定と事物(名詞)の数量詞・類別詞的限定の関係との間に見られる相関性を検討する.最終的に,品詞属性の役割と体系的・理論的な位置づけについて,言語普遍性と言語相対性の両観点から検討する.
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研究実績の概要 |
研究テーマは「事象の動態的把握と静態的把握をめぐる露日対照言語研究:事象と事物のアナロジー」である.ロシア語と日本語を対象に,同一場面の事象記述における動詞表現(動態的把握)と名詞表現(静態的把握)の実態を,文学作品他の原作と翻訳を主な資料とする多言語パラレルコーパスを用いて記述・分析し,動詞表現と名詞表現(それらの概念的把握のし方)における言語相対的特徴を明らかにする.コーパスはロシア語・日本語の他に、参照言語としての英語の資料も含む. 当該年度は,数の文法的カテゴリーが欠如し,数量単位化には名詞類別詞を用いるユカテクマヤ語との比較において,「ロシア語の完了体化接頭辞は動詞類別詞として名詞類別詞と類似する機能を持つ」という主張(L. Jandaら)を,同じく名詞類別詞言語の日本語と比較しながら,検討した. 単位化・個別化における名詞類別詞と動詞類別詞の機能的パラレルと,その原形としての事物と事象による「素材」提示は、一見,共通して見える.少なくとも、共通した意味特徴および機能的に等価とみなされる具体的な表現様式を例に語られることが多い。しかしながら,両者は(1)(静態的な)空間と(動態的な)時間という,記述対象が存在する「場」が持つ本質的差異,(2)個別言語における文法化範疇の相違,に影響を受け,それぞれの言語タイプに特徴的な「素材」提示のあり方で実現する.日本語のような,名詞類別詞言語における事象の「素材」提示と,例えば,ロシア語のような動詞類別詞言語における事象の「素材」提示(すなわち無接頭辞不完了体動詞が表す動作)が,具体的にどのような点で異なるのか、その背景となる動機づけを検証する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度は,申請時には予定していなかった,ラジオ講座の講師を務めることになり,その準備と収録および講座テキストの執筆に一年間を通して時間を割く必要が生じたため.また,国際情勢の影響を受け,当初計画していた海外での研究活動(文献調査・手配,国際会議参加等)が出来なかったため.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に発生した業務負担は次年度では解消されるため,当該年度に予定していたが遂行出来ず遅れの出ている研究課題を集中的に行う.特に分析基盤となる多言語パラレルコーパスの整備を急ぎ、加えて、言語環境の調査をスケッチエンジン等を利用して効率良く進める.そこから対象言語間において叙述の文モデルが動詞表現⇔名詞表現に変換する場合の言語環境および文脈を整理し分析し,傾向を分類する.また,次年度に予定していた,事象(動詞)のアスペクト的特徴と,事物(名詞)の数量・類別詞的特徴の間に見られる機能的アナロジーについては,既に前倒しで取りかかっている.引き続き,類別詞タイポロジーに関連して,事象の概念化の言語相対的な特徴を明らかにしていく.
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