研究課題/領域番号 |
23K00487
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
金野 竜太 昭和大学, 医学部, 准教授 (70439397)
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研究分担者 |
渡辺 慶子 昭和大学, 医学部, 助教 (60868397)
小山内 綾子 昭和大学, 医学部, 助教 (70973379)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2027年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 統語 / 可塑性 / MRI / 神経膠腫 / 島皮質 / 内包後脚 / 失語症 / 構造的再編 / DTI |
研究開始時の研究の概要 |
文法規則に基づき文構造を正しく理解する機能を統語機能という。これまで、統語機能障害は左前頭葉障害と関連することが指摘されてきた。一方、日常臨床では、左前頭葉障害を有する失語症患者の統語機能には個人差があることもよく経験する。この個人差の原因として、統語機能に関与する脳内ネットワーク内における脳の可塑性による再編能力が、脳損傷部位により変化する可能性が推定されてきた。本研究では失語症患者を対象に、大脳皮質構造や神経線維をMR画像解析により計測し、統語機能の変化に伴い病変部位以外の大脳皮質構造がどのように変化し、その構造的変化が統語機能の脳内ネットワークとどのように関連するか検証する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、脳腫瘍(神経膠腫)患者を対象として、統語機能評価と大脳皮質構造の解析を行った。被験者は左大脳半球の神経膠腫患者28名と健常者対照群23名である。責任病巣の同定にはRPI based lesion symptom mappingを用いた。大脳皮質構造解析ではSurface-based morphometryを用いた。その結果、左内包後脚に神経膠腫を有する患者では統語機能が障害されることが明らかになった。また、右島皮質の皮質厚が増大すると患者の統語機能が維持されることが明らかになった。右島皮質の皮質厚は、健常者でも統語処理負荷が増加すると関連性が見られた。さらに、左内包後脚に神経膠腫が少ないほど、右島皮質の皮質厚が増すことが明らかになった。以上のことから、左内包後脚と右島皮質はどちらも統語機能に関連があると推測された。そこで、左内包後脚と右島皮質の解剖学的連関を健常者のMRIデータベース上でFiber trackingを行い調査したところ、両脳領域を連絡する神経結合は、先行研究(Kinno et al., 2014)で同定された統語機能を支える脳内ネットワークと空間的に一致することを確認した。 以上の結果から、統語機能を支える脳内ネットワークにおいて、左内包後脚と右島皮質が重要であることが示された。また、神経膠腫患者では右島皮質における可塑性が統語機能の維持に重要であり、左内包後脚が神経膠腫により障害されると右島皮質の可塑性が障害されることが明らかになった。 また、小脳炎や神経変性疾患についても症例報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳腫瘍患者において、統語機能の変化に伴い右島皮質の大脳皮質構造が変化し、その構造的変化が統語機能の脳内ネットワークと関連することを報告できた。さらに、左内包後脚の障害が右島皮質の皮質厚にみられて可塑性に影響を及ぼすことも報告できた。
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今後の研究の推進方策 |
右島皮質や左内包後脚の重要性について、発達障害、脳血管障害、神経変性疾患を対象とした研究で検証する。また、脳腫瘍患者ではみられた言語処理速度の低下についてさらに検討する方針である。
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