研究課題/領域番号 |
23K00497
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
益子 幸江 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (00212209)
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研究分担者 |
峰岸 真琴 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (20183965)
鈴木 玲子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40282777)
降幡 正志 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40323729)
佐藤 大和 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (50401550)
岡野 賢二 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60376829)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 言葉のリズム / 東南アジア / 声調言語 / 語構成 / 情報構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、言語のリズムを感じるための手掛かりとしての、「強」と「弱」を何に置いているか、それによって何を単位としているかを明らかにしようとするものである。 リズムの単位に関係するものとして、音響音声学的な特性も勿論であるが、言語学的および音声学的な特性の情報(それぞれの言語の特性によって異なる側面がある)と、さらに、言語の情報構造が関わることを示す。単音節声調言語、多音節言語を対照しながら分析することによって、言語ごとに異なる可能性のある諸側面について検討する。
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研究実績の概要 |
タイ語、ラオ語、ビルマ語、インドネシア語、日本語について、それぞれの特性に合わせた形で、音形の調査を進めた。 タイ語、ラオ語、ビルマ語は声調言語としての特徴を持つために、その分析には同じ方法を採用している。基礎語彙300語の調査リストに基づき収集された音声の音声表記から始めて、語の構成の分析までほぼ終了した。音声表記を行うことで、発話時の母音、子音、声調の近年の変化も記述することができた。これらの音形の変化がリズムの単位の変化に反映している可能性も考えられるところである。これらの、3つの言語での一覧表は、本研究のこれからの研究で最も基本的な情報となる。 日本語では特に方言におけるアクセントとイントネーションの関りの視点から分析を進めた。アクセント核の置かれる音節あるいはモーラの分析を進めた結果、方言によっては用言の活用変化でのアクセント核移動がないこと、接尾辞によるアクセント型の変化の傾向の違いなどから、語構造の標識機能が共通語に比べて弱く、アクセントの機能が共通語とは異なる場合があることが明らかになってきた。この方言の場合には語のアクセント型の実現形がそのまま音調(イントネーション)を形成している場合が多くなる。また、長い語(複合語など)では語の内部構造よりも脚のリズムでアクセントが決まる場合もあり、リズム単位として日本語での脚も検討する必要があることが示唆された。 インドネシア語は、基礎語彙300語について、音素と音素配列についての検討を進めている。声調言語のような単音節言語に対して、多音節言語で、しかもアクセントを持たない場合の語構成が主な検討課題である。なお、1語を形成している音節の形だけの分析で、2音節語でCV-CVCが全体の約半分を占めるという結果が出ているが、このような音節の形の偏りもリズム単位およびリズム形成にかかわっていることが推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
言語の特徴によって、(単音節)声調言語、多音節言語でアクセントあり、多音節言語でアクセントなし、という3種類に分けて、分析を進めるやり方を変えている。リズムの担い手の最小単位と考えられる音節の形をよく観察して特定することが第1段階であり、これが昨年度でほぼ達成されている。 インドネシア語では2音節語、3音節語が多く、多音節の語となった時には、音素配列の規則と同時に、語の内部構造についての情報が必要である。いくつかのパタンに分けられるのであるが、リズム単位に関与する要素を取り出せるような適切な分析方法を観察している段階である。 声調言語は単音節で一つの意味を表す語が多いとはいえ、2音節語、3音節語が多いのは当然のことであり、その際にはインドネシア語と類似の分析が必要となり、インドネシア語ですでに得られている分析方法や要素が参考になっている。
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今後の研究の推進方策 |
声調言語(タイ語、ラオ語、ビルマ語)、多音節言語でアクセントあり(日本語)、多音節言語でアクセントなし(インドネシア語)、という3種類に分けて、分析の進め方を変えているが、最終的な到達点は同じところ、つまり、リズム形成がどのように行われるのか、リズムを担っている単位はどのようなものか、であることは同じである。 声調言語では、語中の位置によって音節の形に制約がある可能性があるが、語構造が音節の形だけでなく音声的な現れ方を変える可能性も考えられるし、文内での語の役割や文の発話意図も関与する可能性が考えられる。音声学的情報とこれらの情報を突き合わせることを行い、多重的に観察を進める。 多音節言語でアクセントなしのインドネシア語ではすでに多音節語の語構造についての分析を進めている最中である。インドネシア語では生産的で使用頻度も高い接頭辞があるので、現実の言語運用時にこれらがリズム形成にどのように関与するのかも考慮しなければならない。現時点ではいくつかの接頭辞について観察を進めているところである。 また、1語を形成している音節の形だけの分析で、2音節語でCV-CVCが全体の約半分を占めるという結果が出ている。この音節の形の2音節語が、約半分であるという言語は他にありうると考えるが、これよりも非常に多い割合で出現する言語、あるいは逆に、CV-CVやCVC-CVの形の方が多い言語もある可能性がある。単純にこのような点で比較対照することは危ない面があるのだが、本研究の範囲内で数値を出し、それを手掛かりにさらに言語ごとの特性を考慮した分析を進めることが可能であると考えている。
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