研究課題/領域番号 |
23K00499
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
磯部 美和 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (00449018)
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研究分担者 |
岡部 玲子 専修大学, 文学部, 教授 (60512358)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 言語獲得 / 日本語 / 動詞反復応答 / 生成文法 / 真偽疑問文 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語の真偽疑問文に対する応答は「はい/いいえ」だけでなく、真偽疑問文に含まれる動詞の反復によっても可能である。また否定真偽疑問文に対する応答は「はい」の後に否定文、「いいえ」の後に肯定文が続くという特徴も持つ。真偽疑問文に対する応答詞および動詞反復応答には省略が関与しているという統語分析が提案されており、この妥当性の検証および日本語を母語とする幼児が非顕在的な操作が含まれた要素をどのように獲得するのかの解明は言語理論・獲得研究において重要な課題である。本研究は、幼児による真偽疑問文に対する応答を実験を行って調査し、そのデータに基づいて言語獲得理論と言語機能のモデル構築に貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、生成文法理論に基づく言語理論研究及び言語獲得研究における研究課題である、真偽疑問文に対する応答を幼児がどのように解釈するのかという問いに、実験を実施することで取り組み、得られた実証データに基づいて、言語獲得理論と生得的言語知識を司る言語機能のモデル構築に貢献することを目的とする。 本年度は、すでに実施していた動詞反復応答 (verb-echo answer; VEA) の理解実験の結果を、先行研究および日本語以外の言語のデータに基づき再検討し、国際学会における研究者との議論内容や助言も踏まえ、 論文を執筆した。先行研究 (Holmberg 2016; Sato & Hayashi 2018等)では、日本語のVEAは、フィンランド語などの言語のように、動詞がVからCへ主要部移動した後、主語を含むTPが省略されたことにより生じると分析されている。日本語とフィンランド語の共通点の1つは「副詞を含んだ解釈のVEA」が可能である点である。たとえば、真偽疑問文「太郎は本を静かに読んでいるの」とVEA「読んでいないよ」から成る対話において、VEAは真偽疑問文中の副詞を含んだ「太郎は本を静かに読んでいない」と解釈される。一方、タイ語はVEAを許すが「副詞を含んだ解釈のVEA」は可能ではないようである。このような事実から、VEAを許す言語における変異を制御するしくみが存在する可能性が考えられ、VEAの獲得に関する予測が導かれる。すでに実施した日本語を母語とする4~5歳児を対象とした実験では、この予測と一致した結果が得られており、先行研究の統語分析およびVEAに関する言語間変異を司るしくみの提案の妥当性を高めている。これらの内容を論文にまとめ、まもなく学術雑誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動詞反復応答に関する先行研究を調査し、日本語以外の言語のデータの検討を行った。日本語を母語とする幼児に対して実施したVEAの理解実験の結果を再検討し、論文を執筆した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの成果に基づき、連言接続詞「~も~も」が含まれる真偽疑問文に含まれるVEA、および否定真偽疑問文への応答の獲得に関する新たな実験を準備・実施し、結果を分析する。並行して、子どもと養育者の発話を記録したCHILDESを用いて、VEAおよび否定真偽疑問文への応答に関連する発話がいつ頃どのような形で現れるかを分析する。
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