研究課題/領域番号 |
23K00517
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柳田 優子 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (20243818)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | アラインメント / 非典型的格標示 / 示差的目的語表示 / 非典型的格表示 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は2つの研究課題から構成される。1)日本語のアラインメント変化:現代日本語は典型的な主格・対格型(以下、対格型)言語であるが、上代日本語(8世紀頃)は、言語類型的に活格型とよばれる格システムの特徴をもつ。本研究では、活格型から対格型へのアラインメントの変化のトリガーとなる史的ヴォイス交替に関する実証研究を行う。2)非典型格表示構文の出現:アラインメント変化の付帯現象として16世紀以降に出現した非典型的格標示に関してインド・イラン語派の構文との類型的比較研究を行い、言語変化の普遍性と個別性について考察する。
|
研究実績の概要 |
本年度は2つの観点から研究を進めた。 1)日本語のアラインメント変化:現代日本語は典型的な主格・対格型(以下、主格型)言語であるが、上代日本語(8世紀頃)は、言語類型的に活格型とよばれる格システムの特徴をもつ (Yanagida & Whitman 2009参照)。活格型から主格型へのアラインメントの変化の付帯現象(epiphenomenon)として16世紀以降に非典型的格標示(non-canonical case marking(NCCM))が出現した。非典型的格標示に関する近世資料を中心に実証研究を行い、また通言語的観点からインド語派の非典型的格表示の特徴と出現に関する先行研究の調査を行った。
2)アラインメント変化と語順の変化の関連について:伝統文法では格助詞と呼ばれるものには2つのタイプがある。名詞と動詞の文法関係を表す「が」「の」「を」「に」などと、文中で場所、時間、理由、手段などの任意で現れる助詞「へ」「から」「より」などである。本研究では前者を格助詞、後者を後置詞とよび2つの助詞のタイプを区別する。これまでの大規模コーパスを元にした実証研究から後置詞は名詞由来のものが多く、その変化は文構造の変化に影響を及ぼさない。一方、格助詞の変化は語順の変化などの文構造全体に変化を及ぼすことをデータを元に検証してきた。本年度は、なぜ格助詞の変化が文全体の構造変化に影響するかという理論的問いを立て、格助詞は文の主要部から名詞句の投射上の範疇(D)へ再分析されるという仮説を検証している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、アラインメントに関するこれまでの研究成果を本としてまとめるための準備をしてきた。先行論文をまとめるための時間がかかっているが、研究自体は予定通りに進んでいると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、日本語のアラインメント変化と関係する「係り結び」構文に関して国語学の中でどのような研究が行われてきたか先行研究を調査する。係り結び構文は一般的には文中の強調される要素が文頭に移動する構文を指す。室町時代ごろには係り結びは消滅したが、アラインメントの観点からは主格型が確立した時期と一致する。係り結びの消滅と主格型の確立は独立した変化であるか、あるいは二つの変化に関連性があるかは国語学の中では長いこと議論になっている。日本語史におけるこの2つの主要な変化に対して理論的観点から説明を行うための統語変化のモデルの構築を目指す。
|