研究課題/領域番号 |
23K00529
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
松浦 年男 北星学園大学, 文学部, 教授 (80526690)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 母音融合 / 方言 / 言語データベース / アクセント / 音韻論 / 音韻素性 / データベース |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では九州の各地において見られる母音融合現象がどの程度生産性を持つのか,地域ごとに検討することを目的とする。検討に当たっては(1)大規模方言コーパス,(2)既存資料から構築するデータベース,(3)現地調査により収集した資料から構築するデータベースという3種類の言語資料を用いる。そして,母音融合現象がどういった条件で起こるのかを音韻理論の点から検討し,他言語との比較を行うことで一般言語学的な貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度はデータベースの作成を中心に行った。母音融合に関しては,データソースとして刊行済の方言関係の書籍を用いて入力した。長崎県長崎市,佐賀県北方町(現在は武雄市のため,北方地区と呼ぶ)のデータの入力ができた。その結果,長崎市の資料では母音融合はほとんど見られなかった一方,北方地区では少ないながらも見られた。先行研究ではどちらの地区でも比較的広範囲の用例で観察されていたので,この違いが通時的な変化なのか,資料の性質なのかなどを検討する必要がある。この成果に基づく研究発表が国際学会に採択されたので24年度に発表を行う予定である。 この他に母音融合に限らずデータベースを用いた音声研究を行うことで,方法論上の課題を洗い出し,本研究の課題を効率的に遂行する上での基礎を築いた。具体的には2つある。1つは過去に収集した語彙データに対してアノテーションを施し定量的な分析を行った。具体的には,約100語の単語について発話,注記,分節音,音調,話題の情報を付与した。そして,音調の時間情報とfo値を分析したところ,文に埋め込んだ発話ではピークの音調が後ろにずれて実現することが分かった。また,fo値の幅も広くなっていた。本研究ではこれをanticipatory raisingと関連付けることにより分析できる可能性を示唆した。今年度作成したデータベースは語彙が限られるため,量を拡張することで音声学一般に対する貢献も期待できる。もう1つは平山輝男(1951)『九州方言音調の研究』所収の九州音調分布図をデジタル化してオンラインで公開した。これまで同書のデータはデジタル化されておらず,各地点の音調は目視により確認するしかなかった。デジタル化により検索可能な形になったことで,多くの研究者が効率的な研究を行えるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データの質・量の面で課題があり,母音融合をテーマとした研究発表を行うことができなかった。一方,データベースの作成やそれを用いた研究の進め方に関する知見を深めることはできた。現在,データベースの拡張をおこなっており,それにより研究成果を世に出すことができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
まず,引き続き刊行済の書籍類を用いたデータベースの拡張を行っていく。次に,母音融合の生起条件について従来のデータでは分からない部分があるため,現地調査によりデータを補完していく。そして,学会等において口頭発表をし,フィードバックを得ることで,研究をさらに進展させていく。
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