研究課題/領域番号 |
23K00560
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
東泉 裕子 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (30537337)
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研究分担者 |
高橋 圭子 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (60865814)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 語用論的標識 / 漢語 / 「正直」 / 「真に」 / 「是非」 / 「勿論」 / 「結果」 / 「大体」 / 漢字文化圏 / 通時的 / 通言語的 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本語における語用論的標識の発達について、漢語に着目して、その通時的過程を明らかにし、日本語・韓国語・中国語の漢字文化圏における漢語の語用論的標識と通言語的に比較対照することにより、言語変化の研究に資することを目指す。日本語の語用論的標識の発達は、和語由来のものを中心に研究の広がりを見せている。本研究では、韓国語・中国語の研究者との共同研究をとおして、漢語由来の日本語の語用論的標識の発達過程を精査する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、漢語に由来する日本語の語用論的標識の通時的な発達に注目し、日本語・韓国語・中国語などの漢字文化圏における漢語の語用論的標識の発達について歴史的・対照言語学的観点から分析することである。 初年度である2023年度は、以下のような研究成果を上げることができた。(1)「正直」について、論文「漢語『正直』の機能・用法の拡張」がナロック ハイコ・青木博史編(2023)『日本語と近隣言語における文法化』ひつじ研究叢書(言語編)第196巻、ひつじ書房)に所収された。(2)第18回国際語用論学会(2023年7月)において、研究代表者(東泉)は「真に」について共同研究者の柴﨑礼士郎氏(明治大学)と共同発表を、研究分担者(髙橋)は「瞬間」について柴﨑氏と共同発表を行うことができた。同学会における2件の共同発表のうち「真に」については中国・韓国の共同研究者が編集する国際学術誌の特集号に寄稿する機会を得ている。(3)「是非」について、近現代語を中心に用例収集・分析・考察を行い、国内の研究会においてポスター発表、口頭発表を行うことができた。ポスター発表での内容は論文にまとめ、発表論文集に提出した。(4)中国・韓国・日本の共同研究者たちとの国際共同論文集について、外部査読を経て、論文集全体および個別論文(「勿論」「結果」「大体」)の見直しの段階に入った。(5)語用論的標識の発達は配慮表現の歴史的変化とも関わりが深いことから、漢語を含む配慮表現についてもこれまで研究を積み重ねてきた。2023年度はレル敬語について国内の研究会で口頭発表を行い、論文にまとめることができた(「国定教科書にみる近代の『レル敬語』」(日本近代語研究会編(2024)『論究日本近代語 第3集』勉誠社)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年の計画として挙げていた漢語由来の語用論的標識「正直」「真に」「是非」について、おおむね予定通りに研究を進めることができた。「正直」については、これまでの研究成果をまとめた論文を出版することができた。「真に」については、各種コーパスからの用例収集・分析・考察を行い、研究成果を国際学会で発表することにより、共同研究者たちと意見交換をすることができた。さらに、中国語・韓国語・タイ語における漢語「真」に由来する語用論的標識の発達と比較対照するために、発表した内容を精緻化し、国際学術誌の特集号への寄稿に向けて準備を始めることができた。「是非」についても、各種コーパスからの用例収集・分析・考察を進め、研究成果の一部を発表することができた。発表をとおして、日本語史・歴史語用論・歴史社会言語学などの研究者から意見を得ることができた。 コロナ禍により遅れていた国際共同論文集については、第1回査読を通過することができた。外部査読者からのコメントを受けて、共同編集者として論文集全体を見直し、今後の修正計画書を提出した。また、序章の加筆・修正、終章の執筆、個別論文(「勿論」「結果」「大体」)の加筆・修正も行った。2023年4月現在、寄稿者たちによる修正稿の点検の最終段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2023年度の研究成果に基づき、以下のような点を中心に研究を推進していく。(1)「真に」については、これまでの研究成果を論文にまとめ、国際学術誌の特集号の編者に送り、内部査読・外部審査をとおして精緻化を図ることになっている。(2)中国・韓国・日本の共同研究者たちとの国際共同論文集については、寄稿者全員の修正稿を整え、出版社に提出する。(3)「是非」については、これまでの研究成果を論文にまとめ、専門雑誌への投稿を目指す。(4)応答表現としての使用も認められる漢語由来の語用論的標識の中から、新たに分析対象に加える漢語を選定し、用例収集・分析・考察を進め、国際学会での発表に備える。国際学会においては、中国語・韓国語だけでなくタイ語・ベトナム語などの研究者たちとの意見交換、最新の研究動向の把握を図りたい。(5)語用論的標識(pragmatic marker)、談話標識(discourse marker)、副詞、感動詞、応答表現などの用語の定義を整理する。その過程において、西洋言語学由来の概念の普遍性と、日本語を含め、漢字文化圏の言語に適用する際の留意点や限界などについても検討する。(6)各種データベースを活用して古記録・古文書、漢籍・仏典などの漢文資料からも用例を調査し、漢語由来の語用論的標識の歴史的変化の分析・考察を進めていく。
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