研究課題/領域番号 |
23K00587
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
野口 徹 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (20272685)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 照応 / 再帰代名詞 / 意識主体性照応 / 意識主体照応性 / 束縛 |
研究開始時の研究の概要 |
意識主体照応性の文法における位置づけについては、伝統的には、談話の問題として文文法とは異なる仕組みを持つと考えるアプローチ(Kuno 1987, Reinhart and Reuland 1993など)が大勢であったが、本質的に文文法の仕組みが関わっていると仮定するアプローチ(Nishigauchi 2014, Charnavel 2019など)が提案されている。両者の立場を比較検討することは、意識主体照応性のみならず、文法理論全般に関わる重要な課題である。本研究の目的は、日本語に見られる様々な照応形の文法・談話上の特性を調査し、照応における束縛という概念の適用範囲を明らかにすることである。
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研究実績の概要 |
令和5年度は本研究の初年度に当たる。本研究の目的は、談話の指示対象の発話・思考・感情・意識などが報告される際に生じる意識主体性照応(logophoricity)を中心テーマに据え、先行研究(Nishigauchi 2014, Charnavel 2019など)によって示された、文法原理と談話上の制約との関連について、日本語と英語の比較を通して検討を行い、日本語の再帰形式の文法体系を明らかにすることにある。この目的に沿って、本年度は研究資料の収集と課題の整理を中心に行なった。まず、当初の研究課題は以下の通りである。(課題1)日本語の非有性照応形「それ自身」「それ自体」は、Charnavelの予測通り、免除照応形の特性を示さず、明瞭な照応形(plain anaphor)としてのみ生じるだろうか。(課題2)免除照応形「自分」と「自分自身」の相違点と類似点は何か。(課題3)日本語における再帰形式はそれぞれ文法とどのように関わっているのか。 これらの課題に対して、以下の考察を行なった。課題1については、概ねCharnavelの予測通りの結果が得られたものの、非有性照応形に関する先行研究が少ないことから、より広範囲な調査が必要であるという認識に達した。課題2と3については、予備的な調査を行なったものの、明確な結論を得ることが出来ていない。課題3については、「太郎は自らを鼓舞した」、「太郎は我を忘れた」、「太郎は身を滅ぼした」のようなイディオム形式に近い再帰形式を含めて再帰形式全体を文法上どのように位置付けるのか検討する必要がある。また、「自身」と「自体」については、英語のself形態素と同様に協調用法も存在するため、焦点解釈との関連も明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属研究機関の研究室が建物の改修工事により、現在の建物に仮移転したため、研究資料の閲覧が容易ではなくなった。また、担当教育組織のコース主任としての職務が重なり、研究に必要な時間を十分に確保することが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確認した研究課題とそれぞれの課題に対する見通しを踏まえ、本研究の2年目に当たる今年度は、以下のように考察を進める。まず、課題1については、日本語の非有性照応形に関する文献の調査を改めて行い、分布上の特徴を整理する。非有性照応形を構成する指示代名詞「それ」については、既に豊富な知見があるので、主なものを調査し、統語的・意味的特徴をまとめる。課題2については、「自分」に関する主な先行研究(特に意識主体照応性に関するもの)を再度確認し、「自分自身」との分布上の共通点と相違点をまとめる。課題3については、用例を数多く採取し、再帰形式ごとに分布上の特徴をまとめる。また、再述代名詞(resumptive pronoun)の分布についてSichel (2014)が主張するように、代名詞の分布については経済性の観点から説明できる可能性がある。日本語の再帰代名詞についても、経済性の観点から説明が可能であるのかどうか、また可能であるとすれば、どのような性質について有効であるのか調査する必要がある。これらの課題に対する取り組みから明らかになった点について、論文としてまとめ公表する。
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