自然言語には様々な照応現象が観察され、その背後にある派生や制約は生得的な言語機能を直接的に反映しているという見通しから言語知識に関する研究がこれまで行われてきた。本研究は、特に軽動詞が残留する省略現象に焦点を当て、「なぜ照応現象は音声的に不完全にも関わらず、母語話者は一様の解釈可能性及び統語的特性を示すのか」という問題に取り組む。具体的には、当該の構文が示す抜き出しの可能性に関するパターンを比較統語論の見地から言語横断的に記述検討すると共に、生成文法理論の枠組みで当該のパターンを説明する理論を構築し、理論言語学の中心的な課題の一つである「ヒトの言語知識の解明」に貢献することを目指す。
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