研究課題/領域番号 |
23K00673
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
石川 有香 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40341226)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ESP / 著者介在マーカー / コーパス分析 / ジャンル分析 / Corpus Analysis / Metadiscourse Marker / Academic Writing |
研究開始時の研究の概要 |
工学研究における国際化が進み,研究成果を発表する英語論文作成能力のニーズが高まっている。本研究は,コーパス分析・ESPジャンル分析・インタビュー調査の3観点から,日本人大学院生のMDM使用選択のメカニズムを解明し,効果的な学術論文執筆の指導方法と教材の開発を行うことを目的とする。そのため,複数の学術論文テキスト・コーパスを分析して,日本人大学院生の特徴的MDMを特定し、インタビューによって,大学院生のMDM使用選択方略と,内外の専門家集団のMDM使用への評価を調査して,書き手の言語的・社会文化的・心理的要因が,MDM使用選択に与える影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
工学研究における国際化が進み,研究成果を発表する英語論文作成能力のニーズが高まっている。論文テキストには,書き手と読み手の「やりとり」を具現化した「メタディスコース・マーカー(MDM)」が使用されている。近年のテキスト研究から,MDMは,研究結果の妥当性・信頼性を的確に伝え,読み手を適切な理解へと導き,評価に大きな役割を果たすとされる。本研究は,研究論文に使用されたMDMの使用を調査・分析し,日本人大学院生のMDM使用選択のメカニズムを解明して,効果的な学術論文執筆の指導方法と教材の開発を行うことを目的とする。本研究は,MDMの中でも,特に,著者介在マーカー(Self-mention)を研究の中心に据える。従来,アカデミック・ライティングの授業においてはIやWeといった1人称代名詞を論文テキストで使用することは避けるように指導することが多かった。人称代名詞は,科学論文としての信頼性を損なうとされてきたためである。ところが,近年,1人称代名詞を用いた能動態の文体を推奨する指導が増えてきている。曖昧性を排除し,責任の所在を明確にしたり,研究の重要性や新規性を強調し,読み手と書き手の連帯を強めたりするなどの機能が評価されている。本研究は,1)日本人研究者および日本大学院生が著者介在マーカーをどのように使用しているのか,特徴的な使用選択は見られるのか,2)日本人研究者および大学院生は,著者介在マーカーをどのように評価しているのかを,コーパス分析・ESPジャンル分析・インタビュー調査の3観点から明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに,MDMの使用に関する基礎研究とMDMの分析手法の基礎研究を行い,一定の成果を得た。本研究課題に関する分析では,パイロットスタディとして,トップレベルの研究者による学術論文テキストと博士課程の大学院生による学術論文テキストを収集し,複数の分析手法を用いてそれぞれのMDMを分析して,結果の比較を行った。 具体的には,まず,分野を固定して,学術論文テキスト・コーパスを収集し,分野内でのMDM使用のばらつきを調査した。次に,同一分野における,米国・韓国・日本の大学院生による論文テキスト・コーパスの比較調査を行った。その結果,米国・韓国・日本の間で使用が大きく異なるMDMの一つとして,Self-mentionが認められることが明らかになった。日本の大学院生は,the authorといった名詞や3人称代名詞を用いたSelf-mentionを特徴的に使用していた。米国の大学院生は,日本・韓国の大学院生よりも特徴的に高頻度でSelf-mentionを使用していた。特に1人称代名詞を多用している。一方,韓国の大学院生は,Self-mentionを使用しないという選択をしている可能性も見えてきた。さらに,日・米・中・台・韓の大学生レベルのエッセイライティングを調査したところ,母語による違いだけではなく,台湾と北京などの中国大陸でも,Self-mentionの使用に差があることが明らかになった。研究成果を国内外の学会で発表し,同分野の研究者とのディスカッションを通して,有益な示唆を得た。 なお,次のステップとして,Self-mention選択のメカニズムを明らかにするためのインタビュー調査の準備を始める。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,MDMに関する研究に加えて,いくつかのパイロットスタディをおこなった。主に,MDMに関するテキスト分析によって,日本人の特徴的使用を見た。なお,これらの研究については,内外の研究者とのディスカッションを通して明らかになった新たな課題もある。そのため,今後の作業として,1)これまでに行った分析作業で使用した学術論文テキストデータに新しいデータを加えて,データ量を充実させ,十分に信頼できる統計的処理が行える量のデータで分析を行う。2)すでに頻度分析・コロケーション分析を終えたデータについては,さらに,ジャンル分析を併用することで,MDMの機能の特定をより細かく行う。3)インタビューの対象者,手法,インタビュー項目の設定を行うために,パイロット調査の準備を行う。
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