研究課題/領域番号 |
23K00805
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 北海道博物館 |
研究代表者 |
東 俊佑 北海道博物館, 研究部, 学芸主査 (30370224)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2027年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 蝦夷 / 蝦夷地 / 北海道 / アイヌ / アイヌ絵 / アイヌ風俗画 / 秦檍丸 / 村上島之允 / 伝統文化 / 近世 |
研究開始時の研究の概要 |
(1)『蝦夷島奇観』の異本の調査、(2)秦檍丸の弟子(間宮林蔵・村上貞助)の著作物の調査、(3)秦檍丸のその他の著作物の調査、(4)『蝦夷島奇観』の写本の調査を行い、書誌学的視点からの考察、とりわけ収録絵画の内容対比と詞書の筆跡対比を行う。この研究(作業)を行うことにより、秦檍丸が晩年に制作を試みていた著作物『蝦夷国図説』の復元を試みる。
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研究実績の概要 |
令和5年度(2023年度)は、以下の3項目について、研究とそれに関わる作業・分析を行い、成果を公表した。 1 『蝦夷島奇観』写本のリスト作成と出張調査計画の作成:日本全国の各資料保存機関の目録、WEBサイトの蔵書検索や国書データベースなどを使いながら、『蝦夷島奇観』写本や秦檍丸の作品の所蔵先を調べ、本研究に係る調査対象資料のリストを作成した。次にそのリストに基づき、当年度に行う出張調査の計画を立てた。 2 『蝦夷島奇観』写本の出張調査・熟覧:出張調査により『蝦夷島奇観』写本の熟覧を行い、資料1点ごとの調書を作成した。調査先は、北海道大学附属図書館(7回、日帰り)、北海道立図書館(2回、日帰り)、北海学園大学(2回、日帰り)、アイヌ民族博物館(5回、日帰り)、東京大学附属図書館・国立公文書館・国文学研究資料館(1回、2泊3日)、公益財団法人東洋文庫・国立公文書館(1回、3泊4日)、西尾市岩瀬文庫(1回、3泊4日)で、約30件の『蝦夷島奇観』写本とその関連資料の調査を行った。調査(熟覧)は、資料の状態・外形の把握、法量計測と、資料中の各場面(絵・詞書)の場面名称と特徴を東京国立博物館所蔵本(東博本、秦檍丸の自筆原本)と比較する形で抽出し、調書に記録する作業を行った。また可能な限り写真撮影を行い、画像データの収集に努めた。 3 『蝦夷島奇観』写本の分析と成果公表:出張調査で記録した調書を整理し、また収集した画像データを見ながら『蝦夷島奇観』写本の分析を行った。整理・分析の済んだ『蝦夷島奇観』写本の調書11点について、『北海道博物館研究紀要』に調査報告として成果公表を行った。また分析の結果、秦檍丸の自筆を含む貴重な資料と評価できることが明らかとなった北海道立図書館所蔵の『アイヌ画譜』については、東博本と詳細な比較分析を行う形でその成果を論考として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出張調査を計画的に執行し、分析に必要な画像データの収集や『蝦夷島奇観』写本の調書作成を順調に進めることができ、年度末には成果の公表を行うこともできた。調査件数・回数は当初の計画以上に進めることができ、また緻密な分析の結果、秦檍丸の自筆の可能性のある写本『アイヌ画譜』の存在を見出すことができ、当初の想定以上の成果を研究初年度から上げることができたと言える。しかし研究の過程で、海外にも『蝦夷島奇観』写本が多数存在することが判明し、また国内の資料保存機関における画像の収集に、予定外の経費がかかることも判明し、今後いくつかの出張調査や研究に必要な物品の購入を断念しなければならない場面が起こりそうである。その点において、順調ではない要素がいくつか露わになってきたので、以上を踏まえ自己点検による評価は「(2)おおむね順調に進展している」と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度(2023年度)に出張調査を行い、まだ公表していない資料の調書については令和6年度(2024年度)に取りまとめて公表する予定である。また、秦檍丸の自筆の可能性のある写本がいくつか見つかったため、それらについて、詳細かつ緻密な分析を積み重ね、令和6年度(2024年度)以降に順次成果を公表していく予定である。従来の研究史の理解では、東博本は『蝦夷島奇観』の最も完成された形とされているが、令和5年度(2023年度)の本研究による調査と分析では、東博本は、その前段階の『蝦夷島奇観』よりも内容面で劣っている部分のあることも明らかになってきた。その点を念頭に置きつつ、今後の成果の公表に努めていきたい。また、海外における『蝦夷島奇観』写本の存在や、画像データ収集に係る経費の問題などから、当初の研究計画・経費では、当初の研究目的の遂行が困難であることも次第に明らかになってきた。美術史、言語学、アイヌ文化史等の研究者を交えた発展的な研究プロジェクトを組織し、1年前倒しでより発展的な研究課題(基盤研究B)を申請することを考えているところである。とりあえず当面の4年間は、研究代表者が、歴史学研究の立場から歴史資料の調査・分析として一人でできる研究を行うつもりである。
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