研究課題/領域番号 |
23K00826
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
町田 祐一 日本大学, 生産工学部, 准教授 (00546260)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 日本史 / 日本近現代史 / 社会史 / 社会政策史 / 民衆史 / 労働行政史 / 地域史 |
研究開始時の研究の概要 |
従来、高度経済成長期の職業安定行政は、東京をはじめ大都市圏への一極集中を目指す青少年たち、いわゆる「集団就職」が、教育学、社会学、経済学において明らかにされてきた。これに対して本研究は、歴史学の立場から、高度経済成長期における職業安定所(以下、職安)の活動実態を一次史料から検討し、当該期の職安の歴史的役割を、政策的運用の論理と、都市および地方社会の動向、そして職安職員の視点もふまえて明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
初年度の研究課題は、高度経済成長期の職安行政の機能について、政府の政策の変遷と職安の機能について検討することであった。その際、業務内容を把握できる史料として、東京都公文書館所蔵、法政大学大原社会問題研究所所蔵、国立国会図書館所蔵の労働省および職安の刊行物を調査し、閲覧複写と分析を行うことを予定し、時系列での変化、職安の機能について、下記の点を検討することができた。 初年度は、集団就職に至る前史としての職安の機能を検討できた。第一に、職安は敗戦後「職業安定法」公布施行により失業対策、一般紹介を中心に事業を展開したが、1950年代から新規学卒雇用促進が展開され、1959年に集団求人方式について本省通達が出され、翌年から求職開拓が実施されていったことが確認された。 第二に、集団就職に至る経緯として、県立図書館に所蔵されている各種資料などから1960年代の求人事情に迫ることができた。例えば、山梨県では全国的に求人難となった1961年6月の時点で中卒就職組は4095人で、県内就職者は1959人、県外就職者は2136人と県外への移動が顕著化し、県内6つの職安には求人申し込みが舞い込む状態であり、県の係員が東北の青森、秋田、宮崎、山形、岩手の各県に派遣され、沖縄、四国、九州の各県にも求人をよびかける状態となった。高度成長期の職安はまさにこうした中で地元企業との連携と県外への求人開拓を加速化させ、熾烈な求人競争が現出したことがわかった。 第三に、これらの進展とともに職安業務は失対事業に大きな労力を割かれていたことを確認することができた。とりわけ1950年代初頭には日雇労働者の「求職闘争」が全国各地で展開され、通常業務にも大きな影響を与えていた。しかしこれらの求職者が常用労働者への誘導されていき、労働組合運動が失対の枠の中での闘争へ移行していく経緯を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究課題は、高度経済成長期の職安行政の機能について、政府の政策の変遷と職安の機能について検討するものであった。業務内容を把握できる史料として、基本的な書籍や『失業対策年鑑』などは購入してあり、機関誌『職業安定広報』や新聞・雑誌資料で検索した記事の複写もほぼ終えていたため、史料の分析と、新たな史料の調査を遂行することができた。 とりわけ、職安の失業対策事業に関する役割、日雇い労働者からの「求職闘争」の他業務へ与えた影響の大きさについては、『労働省史』や『失業対策事業三十年史』、そして法政大学大原社会問題研究所所蔵資料から克明に明らかにすることができた。また、1960年代の各地方の集団就職に関する事例では、山梨県立図書館などの調査により、県内に与えた影響、さらに全国へ職安が求人開拓を実施していく経緯が解明できた。さらに次年度の課題であった東京都公文書館所蔵資料に関しても、現在既に調査予定の史料のめどがついており、早い時期に出張したうえで検討に入る予定であることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、高度経済成長期の東京を中心とする都市経済圏の求人の需要状況を解明する予定である。ここでは、「集団就職」の実態を分析する。対象はその受容先であった東京都、神奈川県横浜・川崎市を対象とする。東京都公文書館、神奈川県立公文書館、川崎市公文書館所蔵の主要史料の所蔵は確認済であり、官公庁の刊行物や当事者の記録などの史料調査を実施する予定である。
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