近世期の諸藩では、海に面した集落を、農村部とは異なる編成原理で統治した事例が少なくない。これが「浦方」である。この浦方については、従来、漁村や漁業史の観点から捉えられることが多かったが、実際には漁業以外の廻船業や港町商業など多様な要素も内包する社会であった。本研究では、こうした浦方の多様な機能・生業についても着目し、浦方社会の全体像の把握を目指す。また、諸藩における浦方編成のあり方やその推移を、中心的課役である水主役・船役を通じて分析し、領主権力が海の世界をどの様に把握・編成し、そこに何を求めていたのかを明らかにすることで、近世期の浦方社会の特質について考察したい。
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