研究課題/領域番号 |
23K00847
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
高橋 陽一 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (40568466)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 旅 / 近世 / 藩政 / 仙台藩 / 旅日記 / 温泉 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は近世前期以来の藩の政策、旅行者の来訪動態、領内地域社会の動向を分析し、政策と実態の両面から旅が領国内地域や藩全体の存立、さらには領主・領民関係にいかなる影響をもたらしたのかを検証する。 国政において、「観光立国」政策が推進されてきた現代情勢に照らすならば、旅の動向と藩の存立の関係性を問うことは、いわば「観光立藩」状況の程度や段階を明らかにすることにつながる。その意味で、本研究は歴史学と観光学・人類学等の異分野研究を架橋する学術的可能性を秘めている。また、得られた成果により、現代における国や自治体の旅行政策の進展と、それによる社会の成長に寄与する提言を発信することができるだろう。
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研究実績の概要 |
本研究は近世前期以来の藩の旅行政策、領内への旅行者の来訪動態、旅先となる地域の動向を分析し、政策と実態の両面から旅が領国内地域や藩全体の存立にいかなる影響をもたらしたのかを検証することを目的とした。対象とするのは、62万石の領国を有する仙台藩である。 本課題を追究するために設定した具体的な作業は、①旅行政策をはじめとする仙台藩政の通時的解明②仙台藩領内の地域社会の実態解明③仙台藩来訪旅行者の動態把握である。①については2023年度以前から着手しており、とくに近世前期・中期の17世紀~18世紀前半にかけての藩政の推移を法令などから読み取ろうとしてきた。とくに人や物資の藩領外への移出、ならびに領外からの移入を制限する法令がたびたび出されていること、藩が役人(武士)側の風紀の乱れと身分秩序(武士・百姓関係)の弛緩を問題視していることなどが明らかになってきた。また、②については、18世紀に頻発した水害等の地域災害を背景に、地域住民が贈答を通じて領主側との接点を模索し、地域に利益を誘導しようとする動きを確認できた。こうした江戸時代前半の藩政や領民・領主関係は本研究の土台となるものであり、贈答を介した当該期の領民・領主関係の特徴は、論文として発表した。 ③に関しても、これまでの研究において近世の松島旅行者の記録収集を進めていたが、今回は仙台藩領全域にわたる旅行者の動態把握を目的とするため、松島を来訪しない旅行者の記録に照準を定め、記録(旅日記)の収集を進めた。具体的には、秋田市立図書館、東京都立中央図書館で東北および関東の自治体史を網羅的に閲覧し、旅日記の所在を把握した。また、栃木県立文書館において旅日記を閲覧し、写真撮影を行った。これらの作業により、近世に盛んであった出羽三山参詣の途中で仙台藩領に立ち寄る旅行者が多いことがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で説明した作業課題②仙台藩領内の地域社会の実態解明に関しては、旅行者が来訪する領内の地域社会として温泉を取り上げることとしており、仙台市内の作並温泉で旅館を経営する旧家の史料調査を実施した。点数の多い史料であることから学生の協力を得ながら史料撮影を続けており、適宜解読も行っているが、現状では温泉と領主との関係や温泉内での旅行者の動向が把握できるような、研究課題の核心にせまる史料の発見には至っていない。 また、③仙台藩来訪旅行者の動態把握に関しては、学内業務等の事情により調査の回数が少なくなった影響で、史料の収集がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」で説明した作業課題①②③に引き続き取り組む。①については、活字化された文献の分析のほか、本研究採択以前に調査していた仙台藩領内の旧家の文献(御用留)を解読し、18世紀前半~後半にかけての藩政の動向を探る②については、作並温泉旧家の史料調査を今後も継続するが、場合によっては他の史料を探索することも検討したい。③については、東北6県の図書館および関東の史料保存機関での調査により、旅日記の収集作業を継続していく。 上記の史料調査と並行して分析作業も実施していく。とくに、18世紀の仙台藩領内を通行した旅行者の数量的変遷や領内での行動を把握する作業を進め、これまでで明らかになった藩政の動向を踏まえてその特徴を解明し、2024年度内に論文にまとめたい。
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