研究課題/領域番号 |
23K00864
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉澤 誠一郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80272615)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 中国近代史 / 科学 / 翻訳 / 思想 / 普遍性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近代中国において欧米からの自然科学の導入が有した社会的意味について考察し、またそれに伴って普遍性を希求する思想的な動向が生じた経緯についても明らかにしたい。 このような科学の知見は、中国固有の伝統文化への相対化の意識をもたらし、人類通有の普遍性について目を開かせることになった。その過程を具体的に解明することで、ナショナリズムの形成と並行しつつ、人類社会全体への共感を希求する意識構造もまた育まれたことについて探究する。
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研究実績の概要 |
本研究は、近代中国において欧米からの自然科学の導入が有した社会的意味と、それに伴って普遍性を希求する思想的な動向が生じたことについて考察しようとしている。 欧米における「科学革命」を経た自然科学の知見は、清末の中国に導入されていったが、それは極めて実用的な軍事的な知識から理論的な宇宙論まで多様な要素を含んでいたと言える。科学的な知見を国防や産業に利用しようとする政策は、旧来の統治観念を少しずつ変化させた。また、細菌や天体についての知識は、人間存在についての見方を刷新し、中国の思想にも大きなインパクトを与えていったと考えてよいだろう。 そのような問題関心から、具体的には次のような研究を行った。 (1)フライヤーを始めとして中国への自然科学の紹介に努めた人物に注目し、その意図や思想傾向などを正確に理解することをめざして、特に、宣教師や医者などとして上海などに来た欧米人と、彼らに協力する中国人の協同によって翻訳が進められた状況について考察を進めた。宣教師として中国に来た者のなかには、途中で別の途に進む場合があった。その一例として、ドイツ出身のカール・クライヤーが、ドイツ語の軍事書の漢訳において大きな役割を果たしたことがわかってきた。このような宣教と科学、そして清朝の国防事業との関係について、個別の事例に即して分析を進めた。 (2)江南製造局から刊行されていた翻訳書について、考察を進めた。例えば、布国希理哈撰、英国傅蘭雅口訳『防海新論』6冊 [1873?]について、翻訳にあたって利用されたと推定される原本を見出し、その原著者の履歴や翻訳の過程、その訳書の影響、そして、当該書の日本における流伝状況などについて、分析を進めた。 (3)20世紀中国における科学の社会的な役割についても、基礎的な文献の読解と分析を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以前に別の科研費の分担金で購入した上海図書館整理『江南製造局訳書叢編』兵制兵学類(上海科学技術文献出版社, 2014年)を引き続き利用して、比較的順調に研究を進めることができた。 ただし、予定していた海外出張による史料調査は、校務や家族の事情もあって、2023年度は実現することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
中国近代における科学の導入に関わる史料の収集と読解を、引き続き、着実に進めていくつもりである。 なお、当初予定された中国などの海外での史料調査は、今のところ実現できていないので、今後は適切な時期に実施するように計画を立てたい。
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