研究課題/領域番号 |
23K00906
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
岡本 託 佐賀大学, 教育学部, 教授 (30611868)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 近代化 / 機会の均等 / 幹部候補行政官 / バス=ノルマンディー地域 / ラングドック=ルシヨン地域 |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀のフランスは行政制度の複雑化と拡大化を経験したが、それに伴うエリート層、特に行政において重要な役割を将来的に担うこととなる幹部候補行政官の性質変化や、地域的差異は十分に明らかにされていない。本研究の目的は、地方の幹部候補行政官を取り上げ、彼らの性質と求められた資質の変化を分析することで、エリート行政官の担い手が、旧体制期から続く名望家から専門職化された近代的行政官へとどのように変化したのか、あるいは変化しない部分があったのかを明らかにすることである。これにより、近代社会の原理を構成する一要素としての「機会の均等」が、19世紀の公職登用においてどのように位置づけられたのかを解明する。
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研究実績の概要 |
本研究課題に関して令和5年度に実施した研究は、主に以下の2つの成果をもたらした。1つ目は、本研究において重要な要素である県参事会員の属性(出身地、生年月日、出自、学歴)に関する個人データの収集をおこなったことである。具体的には、フランス国立文書館所蔵の分類番号F/1bI/155~180, F/1bI/297~400, F/1bI/436~530「県参事会員の個人情報:1800~1912年」、そして、ピレネー=オリアンタル県文書館所蔵の分類番号2M3, 4, 13, 14「県参事会員の個人情報」において、19世紀のピレネー=オリアンタル県参事会員46名と、マイエンヌ県参事会員35名に関する史料収集をおこなうことができた。 2つ目は、上記の海外調査で収集した史料の分析を基に、フランスの辺境に位置し、名望家層の影響力が少ないピレネー=オリアンタル県(ラングドック=ルシヨン地域)でも、七月王政期とは異なり、第二帝政期の県参事会員の経歴において、よりシステマチックな養成が実践されていたことが数値的・類型的分析から明らかとなった。一方で、県参事会員の登用においては、ピレネー=オリアンタル県における属性主義と能力主義は,第二帝政期を通じて併存しており,地方の支配階層における「旧体制から続く名望家」から「専門職化された近代的行政官」への変化は,より多面的な様相を呈していたことが明らかとなった。 ここで得られた研究成果は、「データ分析にみる近代フランス地方幹部候補行政官の性質変化―ピレネー=オリアンタル県参事会員を事例として―」として、『歴史学研究』2024年6月号に掲載されることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね順調に進展していると言える。その理由として、まず、フランス国立文書館と、ピレネー=オリアンタル県立文書館などの地方文書館において、十分な史料収集をおこなえたことが挙げられる。そこでは、現地文書館の休業期間を避けて、海外調査の時期を3月上旬~中旬に設定できたこと、そして、収集すべき史料を事前調査で特定できたことにより、十分な史料収集が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度の前半は、令和5年度の海外調査で得られたマイエンヌ県参事会員に関する史料を分析し、彼らの属性、資質・登用論理の変化を解明する期間に充てる。具体的には、彼らの出身地、登用時の年齢、出自、学歴、そして地方上級行政官の登用の際に用いられた請願書の内容を分析する。これにより、名望家層の影響力が強いとされているバス=ノルマンディー地域における地方幹部候補行政官の近代的変容の有無を明らかにし、そこで得られた研究成果を論文として逐次公開する。
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