研究課題/領域番号 |
23K00913
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
江口 布由子 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 教授 (20531619)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | オーストリア史 / 近現代ヨーロッパ史 / セクシュアリティ / 売春 / 東欧近現代史 / 暴力・売買春 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は19世紀末から20世紀前半のオーストリアにおける売春市場の分析を通して、東中欧における人種・階級・ナショナリティを通じた包摂と排除のメカニズムを明らかにすることにある。この時期、売春市場は急速にグローバル化が進行したが、第一次世界大戦後には新たな国境線と管理様式のもと分断され縮小した。本研究は、とりわけジェンダー/セクシュアリティの局面での、東中欧における人種主義的ナショナリズムとグローバルな人種主義との関係に着目し、この市場の史的変容を分析する。
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研究実績の概要 |
本研究は、越境的な女性の移動という観点から、警察的介入および反人身売買運動などの福祉的介入を手がかりにして、これまで未解明であった1890年代-1930年代のオーストリアにおける人種・階級・ナショナリティの交錯した多層的な売春市場のありようを明らかにすることにある。研究計画書でも確認したように、本テーマに関して研究状況を俯瞰すると、帝政期についてはある程度の蓄積があるが、管見の限りではあるが戦間期については十分とは言いがたい状況であった。本研究を開始してからも文献をさらに調査・収集し内容を確認したが、やはり断片的なエッセイが中心であり、まず実証研究に必要となる史料の所在を確認することが必要だと判断した。 そこで、これまでの調査・研究の成果を2023年12月の第20回ジェンダー史学会の報告としてまとめると同時に、オーストリア国立文書館などの所蔵資料をオンラインで確認し整理し、2024年3月に史料調査旅行を行った。売春や性的人身売買に関する史料群は主に以下の四つ、すなわち①規制や国際協定に関する議会や外交での議論、②警察の取締りおよび刑事裁判の記録、③反人身売買運動や廃娼運動などの関連団体の機関誌や性感染症を中心とする医療専門誌、④いわゆる「イエロー・ジャーナリズム」も含む同時代の新聞・雑誌、に分けられる。本調査旅行ではとくに①について国際連盟内の婦人児童売買諮問委員会に関する外務省史料を、②についてニーダーエステライヒ州警察本部局所蔵の売春取締りに関する史料を収集した。また、このカテゴリとは別に、社会行政省が州警察本部と連携して進める性病対策についての史料(社会行政省作成)も収集することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)史料収集については、概要でも記したように、当初予想していた外務省関連史料や警察関連史料の他にも、社会行政省関連の資料が多く残っていることが判明した。したがってこの点については、現段階、非常に進展したと言える。 (2)成果報告については、当初の目標では学会発表に留まり、論文としての成果を出せていないので、やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2023年度の収集資料をもとに、学会発表を行い、確実に論文発表につなげたいと考えている。 また為替相場の影響を受け予算的な課題もあるが、存在は確認しているが、内容についてはまだ調査をしていない史料も多く存在しているため、可能な限り本年度中に調査旅行を行う。 セクシュアリティ史に限らず、医療史や社会福祉史との関連を積極的に探り、書評などを発表するつもりである。
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