研究課題/領域番号 |
23K00920
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
稲田 宇大 (金宇大) 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (20748058)
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研究分担者 |
佐藤 亜聖 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (40321947)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 考古学 / 渡来系文化 / 副葬品 / 金工品 / 装飾付大刀 / 横穴式石室 / 群集墳 / 古代 / 対外交流 / 渡来文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、古墳~飛鳥・奈良時代の「渡来人」たちが、どこから来て、どのように日本列島社会に影響を与えたのか、さらには彼らがもたらした渡来文化がどのように列島社会に定着し、拡散され、変質したのか、そのプロセス全体を考古学的に把握・究明することを目的とする。 まず、倭王権の主導による渡来系文化導入の実態を探るため、日韓両国の古墳に副葬された金工品の比較分析を技術的視点から進める。一方で、王権が受容した渡来系文化がさらに地方へと拡散されていくプロセスを探るため、近江地域を主なフィールドに定め、在地系・渡来系の石室が混在する彦根市荒神山古墳群の発掘など、渡来文化拡散の痕跡を追う調査を実施する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、主に装飾付大刀を中心とした金工品研究を大きく進めることができた。まず、日本国内で実見観察が可能な獅噛環頭大刀の熟覧調査を一通り終了し、本格的検討を進めていくための土台を固めた。さらに、長年取り組んできた単龍環頭大刀の系列別の編年検討を自分なりに固めて、これを公表した。この分析によって、日本列島における単龍環頭大刀の継続的製作・配布を実現し得た要素として、大加耶からの工人渡来のほかに百済系工人の断続的な渡来・関与があった可能性を、従来より踏み込んで議論することが可能となった。 加えて、韓国において出土地が唯一明確な単龍環頭大刀である公州武寧王陵刀の直接的類例といえる資料(愛知県美術館所蔵木村定三コレクションM318刀)の詳細な検討を実施、朝鮮半島における単龍環頭大刀の生産状況に関する新たな知見を広げるとともに、日本列島の初期単龍環頭大刀の系譜的多様性に関する予察を得た。 そのほか、古墳時代の前半期における非金属装の鉄製環頭大刀の系譜を整理し、その舶載・流通と倭王権の政治的意図について検討した。国内の素環頭大刀については、継続的に資料調査を進めており、さらなる分析を継続する予定である。 こうした倭王権主導の渡来系文化の導入と政治的利用についての研究を進める一方で、列島に受容された渡来系文化の地方拡散の一様相を探るべく、滋賀県彦根市に所在する荒神山古墳群の調査、具体的には古墳群中で最大規模の横穴式石室をもつA支群1号墳の発掘調査を実施した。しかし、石室の詳細な構造や副葬品の発見を期待したが、調査を実施したところ、中世以降に墳丘を改変してつくられた礎石建物をはじめとする遺構を検出するなど、古墳時代以後における複雑な再利用の状況が明らかとなった。古墳時代における渡来系文化の拡散を考える上で必要となる石室の詳細情報については、令和6年度調査で本格的に精査することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、装飾付大刀に関する研究は順調である。資料調査のコンスタントな実施とともに、成果の文章化も順次進めており、刀種別の各論の総合的な整理を視野に、検討を継続していく予定である。さらに今年度は古墳出土の耳飾についての分析もおこない、研究発表を試みた。装飾付大刀以外の副葬品の分析にも、都度取り組んでいく。 一方で、もう一つの軸としている荒神山古墳群の発掘調査については、年度ごとに一つの古墳を掘り進めていく予定であったが、実際に調査を実施してみたところ、古墳時代以後の状況に関する想定外の成果が多く、古墳そのものの調査がなかなか進展しないという状況となった。そのため、A支群1号墳の調査は次年度以降も継続することとなり、渡来系石室墳の調査に至るまでにはかなりの時間を要する見込みである。その点から当初の研究計画に照らすと全体的な進捗状況としては「やや遅れている」とした。ただし、荒神山古墳群の発掘調査については、本研究で究明を目指す古墳そのものの評価だけでなく、その後の再利用も含めた古墳をめぐる履歴の全体像を紐解いて地域史の一端を明らかにすることが重要であり、性急な発掘調査に及ぶわけにはいかない。本研究の遂行期間にとらわれず、腰を据えた調査計画を練り直す必要である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、引き続き装飾付大刀を対象とした副葬品研究と、荒神山古墳群をフィールドとした発掘調査を軸とするケーススタディを継続する。 前者について、まずは一通りの実見調査を終えた獅噛環頭大刀に関する分析の論文化を試みる。これに加えて、双龍環頭大刀に関する検討にも着手する。特に、これまで実施してきた京都府湯舟坂2号墳出土双龍環頭大刀をはじめとする丹後地域出土重要資料の詳細調査の成果を軸に、単龍環頭大刀と双龍環頭大刀の製作工人集団間の関係に焦点をあてた研究を進める。 後者の荒神山古墳群の発掘調査については、A支群1号墳の横穴式石室の本格的な調査を実施する。これに加えて、今夏には愛知県幸田町の青塚古墳の発掘調査を予定している。青塚古墳は金銅製龍文透彫帯金具が出土した初期横穴式石室を擁することで著名な古墳である。こうした発掘調査に基づく地域別の検討を蓄積しつつ、渡来系の文化や人の実際の移動を追っていく。
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