研究課題/領域番号 |
23K00925
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
山藤 正敏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (20617469)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 南西カナン / エジプト系拠点 / 前4千年紀末 / 前期青銅器時代 / 南レヴァント / テル・エラニ / エジプト系土器 |
研究開始時の研究の概要 |
前4千年紀末の南レヴァント諸遺跡から出土するエジプト系物質文化は、エジプト‐南レヴァント間関係を具体的に示す証拠として様々に解釈されてきた。しかし、議論の核となるエジプト系拠点は、層位的出土遺物の悉皆的・定量的分析により検証されてこなかった。そこで本研究は、①層位的出土土器の悉皆的定量分析による時・空間的分布傾向の把握、②技術論的比較を通じたエジプト系・南レヴァント系両文化の交流の度合いを定量的評価、また、③西アジアにおける既調査植民遺跡の外来系土器出土状況の類型化及び①②の分析結果との体系的比較を通じて、テル・エラニ遺跡におけるエジプト系拠点の存在と特徴を考古学的に評価することを試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は、イスラエルに所在するテル・エラニ遺跡下位テラス(D3H区)から出土した土器の悉皆的定量分析と技術的分析、また、西アジア地域の既調査植民遺跡における外来系土器の出土事例の分析・類型化とこれらとの体系的比較を通じて、テル・エラニ遺跡におけるエジプト系拠点の存在と特徴を検証することを目的としている。 上記の目的に従い、研究初年度である本年度は、D3H区のうちH12及びH11・G12グリッドから出土した土器群を記録・分析することを当初予定していた。しかし、ガザにおける紛争の影響で予定していた2度目の渡航が叶わず、H12グリッド出土土器の半数程度を記録したにとどまっている。2023年9月の現地渡航時には、H12グリッド出土土器群の記録を重点的に実施した。結果として、1181個体分の土器の情報を記録することができた。このうち356個体は上層、825個体が下層から出土している見られ、上層(4~6層)に比べて下層(7~8層)の方がエジプト系土器の占める比率が圧倒的に高いことが判明した(上層=16%;下層=約46%)。これは、H12グリッドが上層では矩形建物Building H4の外側、下層では別の矩形建物内に位置していることが原因とみられる。本研究以前の調査データと合わせると、建物内ではエジプト系土器の比率が高く、建物外ではエジプト系土器の比率が大きく減じるという重要な情報を得たことになる。以上の結果から、D3H区に造られた諸建物遺構はエジプトに深くかかわる性格を有していた可能性が高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年10月に発生したガザ地区周辺における紛争の影響で、研究初年度に予定していた2回目の現地調査を実施できなかった。現地の情勢とともに、外務省により発出される海外渡航レヴェルについて日々注視したものの、状況が改善することはなく、2023年度内における再度の渡航をあきらめざるを得なかった。このため、本来揃うはずの土器データの半数以下しか得ることができず、意味のある統計分析も実施できない状況にある。したがって、本来抽出できるはずであった製作技術上の特徴等も抽出できなかったことから、研究の進展がやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ガザにおける紛争状態について注視しつつ現地渡航の準備を進めて、十全な調査研究をいつでも実施できるように準備する予定である。これとあわせて、研究初年度に取得した土器データと、2019~2021年度に既に取得済みの土器データを合わせて、先行して統計的分析を進める予定である。 現地調査が可能な状況となれば予定通り年間2回の渡航を実施し、研究初年度に未完であったH12・H11・G12グリッド出土土器群とともに、研究2年度に元来対象としているK11・12グリッド出土土器群のデータ取得も行い、空間分析を十分に行えるだけのデータ数を揃える予定である。 また先述のとおり、研究初年度には当初予定の半分しか現地調査を実施できなかったため、今後の状況によっては、最終年度に2回の現地渡航を行い、取得データの不足を補うことも考慮している。
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