研究課題/領域番号 |
23K00937
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
米田 文孝 関西大学, 文学部, 教授 (00298837)
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研究分担者 |
西本 昌弘 関西大学, 文学部, 教授 (00192691)
黒木 貴一 関西大学, 文学部, 教授 (40325436)
徳田 誠志 関西大学, 文学研究科, 客員教授 (60971885)
井上 主税 関西大学, 文学部, 教授 (80470285)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 老松場古墳群 / 前方後円墳 / 低墳丘円墳 / 上伊那地域 / 原東山道 / 東山道 / 信州ローム層 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、長野県南部の上伊那地域に造営された老松場(ろうしょうば)古墳群を対象に、これまで実施してきた発掘調査(第Ⅰ期第1~4次調査)で獲得されたデータを最大限に活用し、必要最小限の発掘調査を通じて新規資料の収集を行う。調査研究の推進は考古学や古代史学、自然地理学の研究者が協力して多角的な視点から計画的・組織的にその全体像を再構成し、その実態や上伊那地域の古墳文化を解明することを主目的とする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、老松場古墳群の第6次調査として、低墳丘円墳である2号墳の発掘調査を中心に実施するとともに、本古墳群全体を対象とした補足的な地形測量調査や記録写真・映像の作成を実施した。以下、2017年度から6次に及んだ現地調査において、現状で確認できた調査研究の成果を要約する。 第一に、周辺地形を含めた古墳群全域の詳細な地形測量調査を実施した結果、これまで7基とされてきた本古墳群に低墳丘円墳1基が加わった結果、前方後円墳1基と帆立貝式古墳の可能性がある大型円墳1基、在地型の低墳丘円墳6基の計8基で構成されることが確認できた。 第二に、墳形確認を主目的とした1号墳の調査では、遺跡保存を前提とした限定的な発掘調査の結果、墳丘全面に川原石による周密な葺石がある全長約34mの前方後円墳であることを確認した。また、後円部中央部の墓壙内には、簡略な粘土槨と推定できる埋葬主体を確認した。ただし、1号墳の調査では埴輪をはじめとした遺物の出土が確認できなかったため、詳細な造営時期を特定することは困難であるが、墳丘形態や埋葬施設の特徴などから、5世紀前半の造営と措定可能である。 第三に、2号墳では配石をともなう墳丘構造や、その規模から副葬品用と推定できる埋納施設をともなう埋葬主体部などを確認した。特に、伊那谷に特徴的な低墳丘墳である2号墳の詳細な墳丘構造や、埋葬主体の構造などをはじめて包括的に確認した成果は重要である。この2号墳の築造時期は、墳丘上や周濠内出土須恵器の年代観や、1号墳と2号墳の周濠掘削部の重複関係などから、1号墳に後出する5世紀後半の築造と推定できる。 このように、旧科野国の長野県北部(4世紀)から南部(5世紀後半以後)へと前方後円墳の造営地域が変遷する中、両地域の中間地帯である伊那谷北部にその空白期間を埋める5世紀前半に前方後円墳の造営が確認できた歴史的な意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
発掘調査を実施する現地調査について、当初計画では2023年度と2024年度の2か年度で現地調査を実施する計画であった。この事由は、伊那市教育委員会との事前協議において、教員や学生、発掘作業支援の現地協力者などが多数集合した発掘調査の実施によりCOVID-19の蔓延が危惧されるという行政的な判断から、当局が小規模・短期間の実施を要望したことによる。 ところが、COVID-19の蔓延状況が沈静化した2023年度5月、政府により行動条件が緩和された。これにより、参加人員や調査期間を集中することにより、交通費や運搬費など研究費の効率的運用を図るため、2か年度に分散しての実施を予定していた発掘調査を2023年度に集約して実施・終了した。これにともない交付予定研究費の前倒申請を行ったが、本研究課題の遂行にともなう研究経費は現地発掘調査の実施に伴う謝金をはじめと諸経費が中心であり、後年度の交付予定額が減額されても研究遂行上、問題を生じないと判断した。 第二年度にあたる2024年度は、正式な発掘調査報告書の作成準備を推進するとともに、研究代表者・分担者・協力者は、伊那市で開催予定の公開シンポジウムをはじめとした研究成果の周知に向けた事前協議や準備を精力的に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
前記のように、第二年度の2024年度は6次に及んだ現地調査の諸成果を集約した発掘調査報告書の作成に向け、地形・遺構実測図の整理や製図、出土遺物の実測・製図作業などを実施する。あわせて、夏季休業と冬季休業期間を利用した周辺関連遺跡の補足的踏査や文献調査を実施し、成果報告書の充実を図る。 最終年度の2025年度は発掘調査報告書の刊行作業の推進と、調査成果の公開を目的とした公開シンポジウムを開催する。発掘調査報告書は伊那市教育委員会と協議し、長野県内の市町村及び全国の主要な研究機関・大学等に配布し、獲得した調査研究成果の速やかな公開を図る。また、公開シンポジウムは伊那市教育委員会と共催し、2025年秋期に地域住民を主対象として伊那市文化会館で開催する予定で、すでに当局と事前協議を開始している。
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