研究課題/領域番号 |
23K00949
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
菅原 滋 科学警察研究所, 法科学第四部, 主任研究官 (60356160)
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研究分担者 |
石丸 伊知郎 香川大学, 創造工学部, 教授 (70325322)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 中赤外分光イメージング / 有機化合物識別 / 二次元分布測定 / 光源フィルタリン / パッシブ測定法 / 文化財保存修復 / 赤外ハイパースペクトルイメージング / 美術品計測 / 色材 / Passive計測 |
研究開始時の研究の概要 |
美術品の化学組成とその二次元分布を明らかにするために、分光イメージングが使用されています。現在、蛍光X線や可視・近赤外光の分光イメージングが発展しており、元素や顔料分子の識別と二次元分布を測定できます。しかし、有機化合物については中赤外光が有効ですが、マクロ試料の測定は特殊な装置が必要なため、研究は限られています。そこで、本研究では汎用性のある中赤外分光イメージング装置を開発し、美術品や少し離れた場所の素材の測定が可能になり、科学捜査や工場、食品の品質検査、人工衛星からの地表面のリモートセンシングなど、様々な分野の発展に貢献することが期待されています。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究活動は、中赤外分光イメージング技術の開発を中心に進められました。本研究では、美術品上の有機化合物の識別とその二次元分布を測定するための技術開発を目指しています。特に、中赤外分光イメージングが有機化合物の分析に有益であることが確認されている一方で、その活用は未だ限られています。そこで、本研究では新たに光源フィルタリング技術とパッシブ測定法の開発に取り組み、試料にダメージを与えない測定手法を構築しました。 本年度は、国際学会および国内学会での口頭発表を行い、研究成果の共有とフィードバックを得ました。国際学会では、フーリエ型近赤外ハイパースペクトルイメージングシステムを用いた紙や色材、ラミネーションフィルムの測定について発表し、国内学会では同様の技術を用いた紙の測定に関する研究成果を報告しました。また、論文を1件投稿しましたが、残念ながらリジェクトされました。この論文では、ボロメータカメラとイメージング干渉計を用いた中赤外ハイパースペクトルイメージングシステムを使った油絵具の測定に関する内容を扱いました。 実験では、フーリエ型と分散型の近赤外ハイパースペクトルイメージング装置を用いて、文化財化学や文書類によく使用される紙や油絵具、プラスチックフィルムを測定し、試料の識別能力や装置性能の比較を行いました。また、中赤外のパッシブ測定法を用いて、紙や油絵具の発光スペクトルの温度変化を測定し、試料温度の変化による発光強度の変動を調査しました。これらの研究成果は、今後のデータ分析を通じて、更なる知見の獲得に繋がると期待されます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、中赤外分光イメージング技術の開発を通じて、美術品上の有機化合物の識別と空間分布を明らかにすることを目指しています。これまでの進捗状況としては、以下の点が挙げられます。 まず、光源フィルタリング技術の開発に成功しました。これは測定に不要な波長の光をフィルタで除去し、試料に与えるダメージを最小限に抑えることを目的としています。この技術により、試料の保護を重視した分光測定が可能となります。 次に、パッシブ測定法の開発にも取り組みました。この方法は、光源を用いずに試料から自然に放出される赤外線を直接測定する技術です。試料に光を当てないため、完全に非破壊的な測定が実現できます。これにより、文化財の保存状態を維持しながらの詳細な分析が可能になると期待されます。 実験的には、フーリエ型および分散型の近赤外ハイパースペクトルイメージング装置を用いて、紙や油絵具、プラスチックフィルムなどの文化財に関連する試料の測定を行いました。これらの実験から、装置の性能比較や試料識別能力の評価を行い、技術の有効性を確認しました。また、中赤外パッシブ測定法を用いた実験では、試料温度の変化による発光スペクトルの変動を観察し、データの取得に成功しました。 これらの成果は、文化財科学における新たな知見を提供するものであり、今後の研究において重要な基盤となります。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進においては、以下の方策を計画しています。まず、中赤外分光イメージング技術のさらなる改良を進めます。特に、パッシブ測定法の感度向上を目指し、試料に対する完全な非破壊的測定を実現するための研究を継続します。このために、分光器の改良など、具体的な技術開発に取り組む予定です。次に、実験データの解析を進め、美術品上の有機化合物の識別と二次元分布の推定を精度高く行うためのアルゴリズムを開発します。これにより、取得データの信頼性を高め、解析結果の精度を向上させることが期待されます。また試料温度変化による発光スペクトルの変動データの詳細な解析を行い、発光スペクトルの正確な測定を目指します。さらに、研究成果の発表と共有を積極的に行います。国内外の学会や論文誌において、研究成果を発表し、他の研究者からのフィードバックを得ることで、研究の質を向上させます。また、他の研究機関や専門家との共同研究も視野に入れ、技術の普及と応用範囲の拡大を図ります。最後に、本研究の成果を文化財保存修復現場に実装するための試みも行います。実際の文化財に対する適用を通じて、技術の有効性と実用性を確認し、文化財科学の発展に貢献することを目指します。このために、保存修復専門家との連携を強化し、現場でのフィードバックを基に技術の改良を続けていきます。以上の方策により、研究を着実に推進し、美術品の保存修復における新たなアプローチを確立することを目指します。
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