研究課題/領域番号 |
23K00951
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
宇高 健太郎 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 客員研究員 (30704671)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 文化財 / 膠 / 墨 / 保存修復 / 硬蛋白質 / 保存科学 / 美術史 / 日本画 / 煤 / 修復材料 |
研究開始時の研究の概要 |
古典的膠について、物理化学的性質、他材料との相互作用、諸用途適性等の体系化を進める。膠は、ゼラチンを主成分として灰分や油脂分等を含む伝統的な高分子複合材料であり、製造方法や性状によって「洋膠」「和膠」「古典的膠」に大別される。このうち一部古典的膠はその特性から、過年度の研究成果が様々な文化財修復においても実際に活用されまた良好な結果が得られている。これらについて、より状況対応性が高くかつ効率に優れる材料の製造方法を探り、さらに持続性のある活用システムの確立を検討する。また膠の代表的応用材料である墨について、諸原料の性状分析等とともに、製造条件が製品の性能等に及ぼす影響の検証を多角的に進める。
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研究実績の概要 |
研究代表者らが過年度研究において開発した技術(特許第7216429号)等を用いて、古典的膠試料の調製を行うため原料確保や加工を進めた。古典的膠製造方法に関する近代以前の文献的記録について、『墨譜』 (李孝美, 宋代)は、蒐蔵家の墨を集録するとともに造墨技術に関して包括的にまとめられた資料である。同書「膠 (一)」 項 には、下処理無しの牛生皮を原料として膠を抽出する方法が書かれている。またこれに対し、「膠二」項には、 剃毛処理を行った牛生皮から膠抽出を行う方法が略述されている。さらに、「鹿角膠一」項には鹿角を原料とした膠の抽出等についても略述されている。『墨經』(伝 晁貫之, 宋代) は墨匠 晁貫之によるとされる資料であり、鹿膠、馬膠、牛膠、鼠膠、犀膠といった材料に関する記述がある。同書には鹿膠(別名 白膠、黄明膠)の調製に関して、原料を米研ぎ汁を用いて下処理後、抽出を行う方法が『神農本草経集注』(陶弘景, 500年頃)を出典として記されている。また同書においても、鹿角膠に次ぐ佳品として牛剃毛生皮由来膠に関する情報が略述されている。研究代表者は各方法の復元実験を行い、近年の従来市販製品にはみられない淡色かつ不光沢といった性状の膠が調整可能であることを明らかにしてきた。この種類の古典的膠は、書画彩色部分剥落止め処置に際しても色や質感の維持において有効である。原料加工処理方法及び抽出方法の効率化を本研究課題において進め、またさらに関連技術の公知化や体制の安定化を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
協力者における業務上の事情により、当該研究の実験に要する試料材料の確保に遅延が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
近代以前の諸文献資料等を踏まえて、原料確保及び加工のうえ、研究代表者らが過年度研究において開発した技術(特許第7216429号)等を用いて、古典的膠試料の調製を行う。各試料の性状及び成分を分析し、既報の情報と照合する。さらに製墨、絵画制作、文化財修復といった諸用途における適性について実践的に検証を進める。
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