研究課題/領域番号 |
23K00961
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03070:博物館学関連
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
高科 真紀 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 特任助教 (10723207)
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研究分担者 |
川村 清志 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20405624)
白川 栄美 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (50785938)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アーカイブズ / 記録のアクセス / 写真 / 祭祀 / 沖縄 / 琉球弧 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は沖縄の祭祀写真を対象に写真の目録記述方法を検討し、無形文化遺産・知的財産保護の観点から祭祀固有の<伝統的文化表現>に配慮したアクセス体制の整備を目的とする。 研究の遂行にあたっては、当該地域の祭祀を執り行ってきた担い手や住民に協働を求め、コミュニティ内で守り続けたい<伝統的文化表現>とは何かを明確化させたうえで、アクセス体制の整備を目指す。同時にICOM(国際博物館会議)による博物館の定義見直しや博物館法改正の動向を踏まえ、民俗写真や美術作品の扱いとは異なるコミュニティが主体となった沖縄における祭祀写真の活用を通した地域文化の醸成をはかる。
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研究実績の概要 |
本研究は、戦後の変容する沖縄社会を生きる人々の姿を記録した写真家・比嘉康雄(1938-2000)の祭祀写真を中心に、写真のメタデータ記述方法を検討し、無形文化遺産・知的財産保護の観点から、祭祀固有の〈伝統的文化表現〉に配慮したアクセス体制の整備を目的とする。 初年度となる2023年度は、比嘉康雄の代表的な著作である『神々の古層』(全12巻)に掲載された写真が多く含まれる1970年代に撮影された琉球弧の祭祀写真を中心に、①写真のメタデータ記述方法の検討、②写真原板(フィルム)のデジタル化を実施した。①に関しては、写真家の公表著作物のほか、取材ノート等に記載された情報も参照し、写真のみでは特定が困難な撮影時期や場所、被写体等の撮影内容に関わる情報の精度を高める写真のメタデータ記述について実践的検討を実施した。②写真原板のデジタル化に関しては、初年度はデジタルカメラとフィルムスキャナーそれぞれの長所短所を検討したうえで、より高精細でかつ比較的短時間でデジタル撮影が可能であるという理由からデジタルカメラを選定し、写真原板のデジタル化を実施した。 さらに、③先住民記録のアクセスと活用に関する調査として、ニュージーランド・タラウンガ市の図書館のアーキビストに対して、マオリの記録のアクセスと活用に関するヒアリングをオンラインで実施した。また、比嘉康雄と交流があり、韓国済州島の祭祀を記録したことで知られる写真家のキム・スナムのアーカイブズを受入れ、資源化にあたる韓国国立民俗博物館のアーカイブズ部門の研究員との合同での研究会を実施し、意見交流を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で掲げた課題である①写真のメタデータ記述方法の検討に関しては、国内外の写真を主対象とするデジタルアーカイブのメタデータ記述の構成要素等の情報を収集しながら、取材ノートや新聞記事等の著作物の情報を反映させたメタデータ記述の実践的検討が順調に進んでいる。②写真原板(フィルム)のデジタル化に関しても、デジタルカメラを用いたフィルムのデジタル化に着手し、フィルムの取り扱いやデジタル化に精通した研究協力者の支援も得て、計画に沿って進められている。この作業と並行して、ビネガーシンドロームによる劣化が懸念されるフィルムの保存対策にも取り組んでいる。③先住民記録のアクセスと活用に関する調査に関しては、ニュージーランドのタラウンガ市の図書館のアーキビストに対してヒアリングを行い、無形文化遺産保護条約に調印していない同国の先住民文化の保護と記録の管理とアクセスに関わる取り組みについて調査することができた。同図書館とは交流を継続しており、次年度以降に現地調査あるいは合同での研究会等を企画することなども検討している。また、写真家資料の収集・管理・公開を推進する韓国国立博物館とのアーカイブズ部門の研究員との合同での研究会の機会を得たことにより、韓国における写真家資料の資源化やメタデータ記述の実践的取り組みについても知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の2年目となる2024年度は、初年度からの継続として、まず比嘉康雄が撮影した1970年代の琉球弧の祭祀写真の資源化(メタデータ記述/デジタル化)に継続して取り組む。また、写真と一概に言っても、写真原板(フィルム)、コンタクトプリント(ベタ焼き)、プリント(作品も含まれる)など様々な媒体が比嘉康雄のアーカイブズには含まれている。同じコマが複数の媒体で存在しているわけであるが、これらの関連性をメタデータにどのように反映させていくかについては、今後も引き続き検討していく必要がある。また、先住民記録のアクセスと活用に関する調査をさらに推進していく予定である。ニュージーランドのタラウンガ市の図書館の他、国内でも北海道のアイヌの記録のアクセスに関わる調査を実施できるよう調整を進めていく。 また、比嘉康雄が撮影した琉球弧以外の地域の写真について、最近関心が高まっている。未公表の写真を展覧会等で展示したいという要望もあるため、本研究の申請段階では対象としていなかった、琉球弧以外の地域の写真の資源化や祭祀写真のアクセスの検討も、本研究課題と密接に重なるものであることから、研究課題の妨げにならない範囲で取り組む予定である。
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