研究課題/領域番号 |
23K00971
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
須貝 俊彦 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90251321)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 洪水氾濫 / 河道変遷 / 自然災害 / 土砂移動 / 地形分類 / 沖積微地形 / 河道 / 沖積低地 / アバルジョン / 水害 / 微地形 |
研究開始時の研究の概要 |
豪雨災害の激甚化に備え、湿潤変動帯島弧における沖積河道の長期的な安定性を評価し、合理的な河道管理に貢献する。1947, 2015, 2019年の洪水氾濫・河道変化イベントを参照し、利根川水系の谷底低地・扇状地・氾濫原において、掘削調査・堆積物分析・地形計測を行い、後期完新世における沖積微高地形成・洪水土砂移動・河道変化の関係の変化を復元する。アバルジョン(河道位置大規模急変)のホットスポットを抽出し、流域治水に反映させる。
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研究実績の概要 |
1. 河道地形の長期安定性について、関東平野、濃尾平野を中心に、日本各地の平野を対象として、文献レヴューを行った。その結果、1a)上流域からの土砂供給量の変化が河床の侵食・堆積を支配し、そのことが河道の安定性に影響することが確かめられた。また、1b) 河道の不安定化位置が、地形分布と相関し、河道変遷と面的な地形分布構造とに明瞭な対応関係が認められた。2a)河道が人工固定化されると、人工物の影響によって長期的な河道の土砂運搬機能が変質するとともに、人工堤防の相対的低所や、蛇行外縁の水衝部など、人工的に誘導された局所的脆弱部で破堤することが確かめられた。また、2b)破堤直後に堤防は修復強化され、同じ場所で破堤は繰り返されず、アバルジョンは未遂におわることも再確認できた。3)一方で、カスリン台風水害時の利根川破堤による中川への流入に例示されるように、河道位置の先祖返り、すなわち、1b)が生じることもあり、将来の豪雨洪水による破堤外水リスクを軽減するため、1)2)の関係を見極め、2a)を逆手に取った減災文化の見直し(信玄堤、霞提、洪水防備林など)を地形発達史ベースで進めていく必要があることがわかった。 2. 沖積微高地のうちの河畔砂丘に注目し、砂丘堆積物の粒度・化学・鉱物組成の地理的分布を明らかにして、過去の河道位置と水系を復元する手法を検討した。 3. 近年、日本で発生した洪水土砂災害について、これまで緊急調査等で収集したデータを整理して、河道や河谷の完新世の安定性と水・土砂移動に伴う地形変化の関係に焦点をあて、国際第四紀学会(イタリア、ローマ)で発表し、議論した。 4. 関東平野を対象に、ボーリング調査の適地を選定するための調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
事前文献調査や地形判読はおおむね順調に進んだが、秋以降実施予定であったボーリング調査は次年度に持ち越すことになった。単年度予算において、国際学会発表費用が想定を上回り、役務によるコアリングが難しくなる一方、2024年1月1日の能登半島地震の発生を受け、斜面変動と河川地形の応答の観点から、空中写真判読や地形解析、現地調査を行ったため、研究室メンバーによる自力の小規模ボーリング調査を実施する余力がなくなったことが要因の一つである。申請者の所属研究室は、独立大学院の実験系で教員1名定員であるため、分析機器管理や野外調査、その他の研究基盤活動において、大学院生の協力が必要な場合がある一方で、研究活動に大学院生に参画してもらうことで、研究教育指導を実地で行えるメリットを有している。しかし、大学院生の学年構成、人数、各人の興味や研究テーマなどの年変動が著しく、結果的に、研究申請時の計画に若干無理があった可能性も否定できない。
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今後の研究の推進方策 |
広義の利根川流域(鬼怒川流域、中川流域、荒川流域を含む)における多地点での既存コアの解析を進めるとともに、オールコアボーリング掘削調査を実施する。これらをあわせて、旧利根川の河道位置変遷史を復元し、それに与えた海水準変動と土砂共有イベントの影響を評価する。また、現在の沖積微地形を構成する河畔砂丘や自然堤防堆積物の系統的分析がモダンアナログとして有用であることを昨年度の本研究で確かめることができたので、その水平展開をはかる。具体的には、河川運搬堆積物の後背地解析・運搬当時の水系復元を行う。また、外水洪水氾濫によるイベント堆積物・地形の集合体(破堤地形堆積体、自然堤防堆積体、氾濫原堆積物)と、それ以外の平時の堆積物・地形(流路、砂洲、河畔砂丘)との複合体として、沖積微高地を細区分可能かどうか、その普遍性を検討し、人工改変が進む前の過去の洪水の頻度規模復元の可能性を検討する。
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