研究課題/領域番号 |
23K00977
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
濱崎 宏則 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (20617295)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 流域連携 / 共創・共考 / マルチステークホルダー連携 / 森・川・里・海連環 / 流域水循環計画 / 共創 / 水循環協議会 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「各流域における流域連携の実現に寄与する,共創アプローチによる流域連携の実証モデル構築」を目的として,以下の3つの工程により研究を進める. 工程1:日本国内の各水系における流域連携の現状と課題の把握(2023年度) 工程2:諸外国の先進事例から日本の課題克服への示唆を導出しモデルを構築(2024年度) 工程3:日本国内の流域協議会との共創アプローチによるモデルの検証(2025年度)
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研究実績の概要 |
2023年度は,全国の自治体を対象に実施するアンケート調査の準備として,主に文献調査を行って国内外の流域連携の現状と課題を把握しその在り方について検討した.また,流域連携の実態や河川とその流域に対する認識を把握するために,琵琶湖流域の野洲川・瀬田川の上流・中流・下流において,地域住民を対象としたスノーボールサンプリングによる聞き取り調査を行った. 前者の文献調査の結果,上-中-下流の空間的・地理的な森・川・里・海の連環と,それに関係し支える役割を有する人間側のマルチステークホルダー連携が重要な要素であることが把握できた.とくにマルチステークホルダー連携に関しては,従来からの大きな課題となっているパブリックセクターにおける縦割りの問題や,トップダウンとボトムアップを融合させる官民連携・住民参加の問題など,流域ガバナンスの視点が依然として肝要であることを改めて理解した.流域連携を支える組織としては,国内外を問わず協議会を設置する傾向が強いが,行政がトップダウンで住民を巻き込んで結成したものや住民のみで立ち上げた団体,上流や中流を巻き込まずに下流だけで組織したものなど,さまざまな形態があることがわかった. 後者の聞き取り調査は,琵琶湖流域の2つの河川を対象に上・中・下流のそれぞれにおいて,ショッピングモールや農産物直売所で10人ずつ協力を求め,合計60人に対して実施した.その結果,下流の住民の水や川に対する意識は,主に水道や水害および自宅に近い河川や堤防など自分の生活圏内にのみ強く向いていて,遠方の中流や上流には向いていないという特徴がみられた.他方で,上流に行くほど住民の下流への意識が強くなり,自らの水の使い方や処理の仕方などの生活様式が,下流の水環境に悪影響を及ぼす可能性を懸念する傾向が強まるという興味深い結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該研究が思うように進まなかったもっとも大きな理由として,単年度かぎりの他の複数の研究プロジェクトに新しく採択されたり,他の研究者から参画を依頼されたりするなど,当初想定していなかったエフォートがかなり発生してしまったことが挙げられる.これらの想定外の新規研究プロジェクトは,2024年度末までに一定の成果を挙げることが求められたために,これらのほうを優先して取り組まなければならなくなり,当該研究に割く時間を確保することが困難な状況となった. そのため,当初予定していた6つの地方自治体に対するインタビュー調査のための準備として必要だった文献調査に,かなりの時間を要してしまった.また,行政への聞き取り調査を実施する質問票を作成している段階で,流域連携の実態と住民の認識を事前に把握しておく必要性が生じたため,急遽,琵琶湖流域でのスノーボールサンプリング調査を実施することになった.そのため,対象自治体へのインタビュー調査が,さらに先延ばしとなってしまった. 以上が終了した時点で既に2024年2月に入っており,インタビュー調査およびアンケート調査の対象としていた自治体に依頼をかけたところ,年度末の繁忙期に入って対応が難しい状況になったとの回答が相次いだことから,これらの調査を見送らざるを得なかった.
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今後の研究の推進方策 |
来年度については,今年度に実施できなかった先行事例と考える6つの自治体へのインタビュー調査をなるべく早い段階で終え,全国の地方自治体を対象としたアンケート調査を年度の前半には終える計画を立てている.アンケート調査をより効率的かつ効果的に進めるために,同様に流域連携に関心をもって特定の地域で定量調査を行ってこられた研究者に協力を依頼して,既に何度か研究会を行ってきた.加えて,アンケート調査の実施を補助するアルバイト雇用も既に確保できている. なお,今年度予定していた研究の推進方策として,3カ国で実施する計画だった参与観察を重要度の高い2カ国に絞り込む.当初の予定では,今年度はイギリス・ドイツ・オランダの3カ国において,特定の流域で連携の取り組みを精力的に行っている団体を対象に参与観察を行う計画であった.しかし,研究の進捗が遅れていることや,昨今の急激な円安のために旅費・滞在費が当初の想定よりも大きく膨らんで研究費が不足する見込みとなったことをふまえて,イギリスとオランダの2地域に絞り込むこととした.これによって,各地域に少し長く滞在することが可能になり,それぞれの事例をよりじっくりと観察することができるようになると考えた. 対象地域を1つ減らすことによって当該研究に必要な知見が不足すること,および急激な円安による海外研究の資金が足りないことへの対処として,今秋に国際共同研究強化に申請することを検討している.参与観察を行う予定のイギリス・オランダの団体とは既にコミュニケーションをとってはいるものの,今回の調査では滞在期間が短すぎるとの指摘も受けている.また,現地で本研究と関連する課題に取り組む大学や研究者ともコミュニケーションをとっているが,本研究の資金では共同研究を実施するには十分ではないためである.今年度の調査をふまえたさらなる研究の展開も推進していきたい.
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