研究課題/領域番号 |
23K00979
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
瀬戸 芳一 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 特任研究員 (70769942)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 局地風系 / 海水温 / 気温分布 / 短時間強雨 / 関東平野 |
研究開始時の研究の概要 |
関東地方平野部を対象に,長期間の高密度な地上気象および海水温の観測資料を用いた統計的検討を行い,近年の局地風系変化および沿岸域の海水温変動を評価する.これにより,密接に影響しあう風系場と気温場および海水温,これら相互の関係を検証し,海域や時期によって異なる海水温が,局地風系を通じて地域スケールの気温分布に及ぼす影響を観測資料に基づいて明らかにする.さらに,高頻度な観測資料を用いて,強雨発生と深く関連する地上風の収束・発散を精度良く求め,短時間強雨の直前予測に資する発散場の特徴を明らかにする.
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研究実績の概要 |
高温が頻発する関東地方平野部における夏季の気温分布に影響を及ぼす要因として,海風などの局地風系が海水温を反映した海上からの冷気移流を伴うことが挙げられる.関東沿岸域の海水温は,内湾のため高温な東京湾と親潮の影響で低温な鹿島灘のように海域によって大きく異なり,季節内の変動も指摘される.本研究では,長期間の高密度な地上気象および海水温の観測資料を用いた統計的検討を行い,近年の局地風系変化および沿岸域の海水温変動を評価する.これにより,密接に影響しあう風系場と気温場および海水温,これら相互の関係を検証し,局地風系を通じて地域スケールの気温分布に海水温の変動が及ぼす影響を観測資料に基づいて明らかにする. 研究代表者は,関連する研究課題(科研費JP19K13436「近年の気圧配置型変化が関東平野の局地風系と気温分布に及ぼす影響の解明」)において,本研究でも使用するアメダスや常監局の密な観測資料を収集して品質管理や風速の高度補正などを行い,発散場の算出や経年変化の検討が可能となる均質な地上風と気温のデータセットを整備して研究を進めてきた.2023年度は,これらをもとに多変量解析の手法を用いた局地風系の類型化を行い,気温分布や気圧配置型との関係をまず検討するとともに,気象庁が整備した海面水温データであるMGDSSTを用い,沿岸域の海水温変動とそれに対応した気温分布の特徴を予察的に検討した.その結果,風系の各類型は一般場の気圧傾度との関係が認められ,日中に南寄り海風が卓越して東寄り海風の弱い風系では,日本の南への太平洋高気圧の張り出しが強かった.このような日には,鹿島灘沿岸や内陸部で顕著に高温となる一方,風速の大きい関東南部における午後の昇温は相対的に抑えられるなど,気温分布には風系による差異が認められた.また,海水温の年々変動は鹿島灘で大きいが,関東南岸の海域で高水温偏差時に平野部でより高温傾向がみられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は,関連する研究課題において整備した均質な地上風と気温のデータセットを活用し,多変量解析により分類した風系場の各類型における特徴や,気圧配置型と風系との関係およびこれらの近年における出現頻度変化についての詳細な検討を行った.また,海面水温と気温との大小関係や風速に基づいて海上からの冷気移流を評価するにあたって把握しておく必要のある,分類された各風系型における気温分布日変化などの基本的な特徴についての検討を進めるとともに,沿岸域の海水温変動やそれに対応した気温分布の特徴を検討した. 当初,関東沿岸域における実測の海水温観測データを収集して解析に用いる予定であったが,これらの整備が完了しなかったため,気象庁により整備された海水温データを用いた予察的な解析をまず行った.また,今年度に行う計画であった,海域・時期による海水温の差異と気温分布との関係についての検討が十分には実施できていない.これらの理由により,本研究の進捗状況はやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,関東地方平野部を対象に,現在まで約40年間に及ぶ長期間の高密度な気象観測資料および沿岸域の実測の海水温データを収集し,海域や時期によって異なる海水温が,局地風系を通じて地域スケールの気温分布に及ぼす影響を評価する. まず,関東沿岸域における海水温観測データの収集を早急に行う.各地の水産試験場や海上保安庁,気象庁により,定地での水温観測がほぼ毎日実施され,日別の海水温分布図が1985年頃から作成されているほか,近年では自動観測ブイによる連続観測も行われ,日別値や時別値が公開されている.これらを可能な限り収集し,これまでに整備した高密度な気象観測資料と合わせて,長期間のデータを用いて解析を行う. 次に,関東平野における局地風系を類型化して条件を揃えた上で,局地風系と気温分布との対応を明らかにする.海面水温と気温との大小関係や風速に基づいて海上からの冷気移流を評価し,海域によって日々異なる海水温が地域スケールの気温分布に及ぼす影響について解析を行う.また,海水温の年々変動や風系の出現頻度の近年における変化にも着目して,密接に影響しあう風系場と気温場および海水温,これら相互の関係を検討し,地域スケールの気温場に局地風系を通じて沿岸域の海水温変動が及ぼす影響を経年変化の観点も含めて解明する. さらに,約15年分が利用できるアメダス1分値等の高頻度観測資料を用いて地上風の収束・発散を精度良く求め,短時間強雨の発生前後における発散場や水蒸気量の特徴を明らかにし,日々の局地風系と気温場および海水温とも密接に関連する強雨の直前予測に資する知見を得る.
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