研究課題/領域番号 |
23K00982
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
伊東 瑠衣 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(地球情報科学技術センター), 特任研究員 (60793362)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 領域気候 / 極端事象 / 局地循環 / 気候変動 / 極端高温 / 地球温暖化 / 将来予測 |
研究開始時の研究の概要 |
高解像度かつ大規模な気候情報の解析から、関東域での極端な高温日には、発達した太平洋高気圧下で発生する局地風が支配的で、この局地風の将来変化が高温予測にとって重要であることが示唆された。本研究では、本州中部の山岳域に着目し、地理由来の局地風が関東域の高温発生に与える影響と、地球温暖化に伴う局地風の変化が周辺の高温予測やその予測不確実性に与える影響について、気候予測情報の解析と領域大気モデルによる数値実験から明らかにする。
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研究実績の概要 |
水平解像度5kmの領域気候モデルによって作成された大規模な気候情報を用いて、関東域で極端な高温が発生する事例の大気場の特徴と将来予測の傾向を明らかにした。熊谷と東京を対象に極端高温の事例を抽出したところ、これらの事例で合成した地上風は南風から南東風が支配的で、関東平野の内陸部まで海からの風が進入していた。この特徴は、先行研究で示された、同じ条件で抽出された他の地域での極端な高温事例での風の特徴(周辺の山から吹く風)とは対照的で、関東域の極端な高温特有の風のパターンである。地球温暖化が進行した条件で同様に極端高温の事例を抽出し、現在気候条件での地上風と比較したところ、関東平野の東西、つまり平野の内陸部と海岸部で異なる風の変化傾向を示した。具体的には、内陸部ではおおむね東風変化で、相対的に海岸に近い空気塊を内陸へ運ぶ一方、海岸部では北東風変化でより高緯度な地域の空気塊の流入を促す変化であった。これらの変化は周辺の相対的に冷たい空気を取り込む変化で、関東域で将来、極端高温の上昇が抑えられる原因となっていた。本研究ではさらに極端高温の抽出条件を厳しくしたところ、熊谷では上位0.1%、上位0.05%の事例において、現在気候条件下での地上風は山からの風に変わり、フェーンの発生が示唆された。これらの事例では、将来、気温上昇量は平均気温に比べて大きく、すなわち厳しい暑さは将来より厳しくなることが示された。以上の成果を、国際学術誌で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模な気候情報を用いた解析から、現在気候条件において、関東平野での極端な高温の発生時には、地上付近では海からの風が支配的であり、極端な高温の条件をより厳しくすることで、地上風の風向きは変わることが示された。さらにこの高温条件に依存した風向の違いが、将来の高温予測の傾向に違いをもたらすことも明らかにした。これらの成果によって、関東域での高温予測にとって地上風のパターンが重要であることが示され、当初計画していた地上付近の循環場に着目して高温予測の理解を深める研究を引き続き進めていく根拠を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究において、関東平野に大規模な海風をもたらす要因の1つとして、中部山岳域上での低圧場の発生が示されている。計画した、地上風変化が高温発生にもたらす影響を明らかにするため、この低圧場の発生を含めた局地循環と関東域の高温発生の関係の解明を計画通り進める。計画では領域大気モデルを用いた感度実験を予定しているが、これに加えて、ここまでの解析で用いた大規模気候情報は、極端事例の統計解析を行う上で十分な事例数を確保でき、高温事例での地上風の特徴をよく再現していることが分かったため、引き続きこれらのデータを用いて、高温事例における中部山岳域を含めた比較的広い領域での局地循環の特徴も調査していく。その結果を受けて、予定する感度実験の事例選定や、実験設定の検討を行い、その上で、実験の計画を効率的に進めていく予定である。
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