研究課題/領域番号 |
23K00989
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
香川 雄一 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (00401307)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 政治地理学 / 迷惑施設 / 立地紛争 / 衛生問題 / 環境問題 / 立地選定 / 廃棄物処理問題 |
研究開始時の研究の概要 |
環境問題として工業化や都市化によって生み出されてきた汚染物質を、排除し管理しなければならないという事態が産業革命以降に出現してきた。核開発後には廃棄物の管理は、さらに困難になり重大問題化した。衛生問題や環境問題に対して、管理設備や処理施設の立地という観点から、過去の関連施設の分布傾向を明らかにして、将来的な問題解決に貢献する。隔離が必要な迷惑施設をめぐる立地紛争を、政治地理学的な研究視角から、位置の選定プロセスやコンフリクトの過程、問題解決とそれに伴う新たな課題という点で分析していく。過去の迷惑施設の立地問題に着目することで、将来的に必要な迷惑施設の立地選定という課題への提案を導出していく。
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研究実績の概要 |
本研究において、最初の目的である迷惑施設研究への政治地理学的な視角の提示を試みるため、具体的な事例として、近代日本の衛生施設としての隔離病院、高度経済成長期以降の日本全国における環境整備施設としての廃棄物処理施設、日本及び世界において原子力発電所や核廃棄物処理施設などの核開発関連施設の立地について現地調査の準備を進めている。施設の立地をめぐっては紛争を生じさせる事例に対して、空間的な立地分析に加えて、決定をめぐる意思決定や立地反対運動を明らかにしていくために資料収集を進めた。 明治維新以降の日本の近代化において、第二次世界大戦以前の段階で六大都市と称された、東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸における、環境問題や衛生問題を含めた都市問題の発生を確認するために、コレラを代表とする感染症対策としての隔離病院の設置場所とその立地問題について調べ始めている。 高度経済成長期に全国的に大きな政策課題となった廃棄物処理施設の立地問題について、廃棄物の量の増加とともに有害化学物質などを含む産業廃棄物の処理方法を把握していきながら、廃棄物処理施設の立地傾向を全国的に解明するために、立地問題の発生例を収集しつつある。 原子力発電所や核廃棄物関連施設の立地場所において、計画当初から操業後に至るまで立地紛争を抱えており、1970年代以降において、日本全国で各電力会社により、原子力発電所の立地候補が適地として選定され、その多くは反対運動等によって建設を断念してきた歴史を調査している。各事例の位置決定プロセスを解明するとともに、立地の有無にかかわらず地域の現状を把握しつつある。 隔離病院や廃棄物処理施設の立地選定を迷惑施設問題の解決策の一例として、核廃棄物の処理や管理における立地選定という政策課題に対して、政治地理学的な研究を援用することにより、立地問題への解決策の提案を導ける施策を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
立地紛争を対象とした地理学的な研究はまだそれほど多くないため、隣接諸分野の研究も参考にしつつ資料調査を進めることができている。環境問題や衛生問題の深刻化は人類の将来において必要かつ忌避されうる施設の建設を不可欠のものとしていると考えられるため、過去の事例を参照としつつ、将来的に発生するであろう課題を見据えておかなければならない。そこで過去の迷惑施設の立地における歴史的プロセスを解明すると同時に、現状におけるさまざまな課題を把握した上で、将来的な課題解決への提案へと導くための材料収集を進められつつある。今後も人文地理学だけでなく、関連諸分野との協力による学術的な貢献に結びつくとともに、生活環境や公衆衛生という人間の生活において不可欠な生活基盤を支える施設の立地選定に寄与できるような調査を実施するために、準備はおおむね実施できている。ただし海外調査については関連する研究との日程調整がうまくいかなかったため、初年度の渡航は見送りとなった。
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今後の研究の推進方策 |
近代日本の衛生施設、高度経済成長期以降の日本における廃棄物処理施設、世界各地の核廃棄物処理施設の立地紛争を歴史的に明らかにすることによって、迷惑施設の現状と将来的な立地選定における課題解決に向けた情報を整理統合していく。 明治期以降の衛生施設の立地において、統計書による周辺データの収集と旧版地形図による地域の概況を確認することができる。衛生施設がどのような場所に選定され、その周囲がどのような地域的特徴であったのかを明らかにしていく。 日本全国の現在における廃棄物処理施設の立地データをGIS(Geographical Information System)によって分析していく。歴史資料で廃棄物処理施設の選定過程を確認するとともに、立地紛争が発生した施設の周辺地域を中心に立地傾向の地域的特徴を明らかにしていく。 原子力発電所を中心とした原子力関連諸施設の建設場所および計画地点をデータベース化する。それぞれの立地選定プロセスを政治過程から明らかにしていくとともに、施設周辺住民を中心とした反対運動の発生などによる紛争過程を政治地理学的に分析していく。 諸外国における核廃棄物処理施設の立地政策を確認した上で、施設の立地場所周辺における地域的特徴を立地紛争の発生などとともに明らかにしていく。さらには迷惑施設の将来的な立地選定プロセスに必要となるような情報を、現地調査の実施を含めて収集していく。 迷惑施設の立地選定政策において必要な条件として、自然環境や人口分布、社会構造に加えて、政治過程が決定的な影響を及ぼすことがある。時代背景も考慮しつつ、将来的に迷惑施設をどのように立地選定していくべきかについて、政治地理学的に解明していく。
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