研究課題/領域番号 |
23K00991
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
田部 俊充 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (20272875)
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研究分担者 |
大西 宏治 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (10324443)
寺本 潔 東京成徳大学, 子ども学部, 特任教授 (40167523)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | まちづくり・地域づくり / 地理教育 / 地誌 / 地理的概念 / 未来志向なまちづくり・地域づくり / ラーニング・プログレッションズ / 実験授業 / ロジャー・ハート / 地理的技能と概念形成 / 海外の地理教育 |
研究開始時の研究の概要 |
学校での地理教育を通じて、まちづくりや地域づくりなど地域の未来を考える人材を育成するために必要な地理的技能や地理的概念がどのようなものなのかを明らかにするのが本研究の目的である。地域づくりやまちづくりを考えるためには地域の課題や将来の地域のあり方を他地域との比較で相対化してとらえるための地理的な概念や知識が必要となる。児童・生徒の地理的概念の習得プロセスについてラーニングプログレッションズアプローチを援用して検討するとともに、近年の研究で十分に議論されてこなかった地誌学習に焦点をあてる。
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研究実績の概要 |
研究代表者の田部は、地理教育について国内外の動向を把握するとともに、さまざまな研究授業の機会を持ち、授業実践をする中で、地理教育のあり方を考える研究を行ってきた。2023年度は国内外の都市地理学、都市社会学、建築学のまちづくり・地域づくりの事例を収集した。また2024年度前期に集中的に調査する予定のニューヨーク市マンハッタン区、ブルックリン区におけるまちづくり・地域づくりの現地調査の準備を行った。検討を重ねて、現在の中高地理教科書で扱われているニューヨーク市の都市再開発が変貌し、持続可能なまちづくりとなっていること、景観が変わるほど超高層ビルが増えてていることなどを中心に文献収集、調査を進めている。 研究分担者の寺本は、ESDの視点を交えて観光教育のカリキュラムを検討し北海道や新潟県を事例とした、事例地域を深く取り上げる観光教育の実践を行っている。 研究分担者の大西はIGU地理教育コミッションでも積極的に活動し、国際共同研究に参画し、地理教科書執筆者の地理的意識の国際比較研究などを行い、学術論文として掲載してきている。このように海外の地理教育の事情に精通するとともに、海外とのネットワークにより、さまざまな国の地理教育に関する事例を収集してきた。2023年度は2024年8月にダブリンで開催される第35回 International Geographical Congress 2024において田部と共同発表の準備と企画,そしてIGCCGEに発表要旨を申請し,Community development on geography education in Japanese school education curriculum(日本の地理教育におけるまちづくり・地域づくり)というタイトルで受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
田部は,日本地理学会第43回地理教育公開講座2023年度日本地理学会春季学術大会公開シンポジウム1として,テーマ「次期改訂に向けての小中高地誌学習の新たな方向性」を企画し,日本地理教育学会学会誌新地理に投稿した。従来の日本の地誌学習の伝統を活かした,欧米の能力ベースの地理教育のみにとらわれない,知識も含めた地域理解のプロセスをどう具現化し定着させていくのかを考え,従来の地誌学習から,資質・能力の育成につながる新しい地誌学習が議論された。寺本も同シンポジウムで「初等教育,社会科における日本の地方地誌教育への一つの提案」として,地方地誌学習の一提案,「公民としての資質」との関係,小学校社会科内容の改善に向けて,の報告を行った。 大西は8月にアイルランド。ダブリンでのIGUCGE(国際地理学連合地理教育委員会)の発表を予定しており,その準備を進めた。 寺本はまちづくり・地域づくりを担う人材を育成するために、観光題材を地理教育教材化し、北海道厚岸町厚岸小学校6年学級や根室市歯舞学園(中学校1・2年)において当地の牡蠣養殖や開拓物語、北方領土と引揚者による開拓などをテーマに地図や観光資源学習を展開した。また石垣市立登野城小学校6年生を対象に観光客のニーズに応じた観光デマンド教材を整理し、石垣島の観光地図内で活用できる資源の読み取り学習を実施した。また現在までにラーニング・プログレッションズの概念形成を念頭に発達段階に応じた地域観光教育のカリキュラムの概要が構築できた。とりわけ石垣市においてはプライマリーレベルでの観光教育カリキュラムを一覧表として作成し、単著『観光市民のつくり方』日本橋出版、2024年2月発行の中で発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
田部は国内外の地誌に関する文献を地誌,とくにアメリカ地誌を中心に検討した。そして,地理的概念や地理的知識の習得,まちづくりや地域づくりといった地域の未来を形作る人材育成について検討するために,アメリカ地誌でも必ず取り上げられるニューヨークのまちづくり,再開発,ジェントリフィケーションの現地調査を試みたい。「再開発」「ジェントリフィケーション」「持続可能なまちづくり」といった地理的な概念や知識を,変化を遂げるニューヨークの現地調査を重ねて検討して教材化につなげたい。その際には東京をはじめとする国内の地域の課題や将来の地域のあり方を視野に入れながら検討したい。 寺本は,勤務先が東京都の私立大学から沖縄県の公立大に変更したため、沖縄本島及び離島における地域の地理的環境を生かした観光教育事例を積み重ね、引き続き北海道教育委員会の協力も得て、北海道内の候補地の学校においてまちづくり・地域づくりのための地理教育により地理的技能と概念形成に関する出前授業を実施し、開発した教材と指導法の検証を継続していきたい。
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