研究課題/領域番号 |
23K00998
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
松村 啓子 宇都宮大学, 共同教育学部, 教授 (60291291)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 営農再開 / 持続性回復 / 意思決定 / 経営多角化 / 農地中間管理事業 / 地域システム / 持続可能性 / 乳肉複合 / 原子力災害 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、経済性の追求と環境負荷軽減という相克する2つの目標を、地域システムの分析枠組みを用いながら、経営体レベルおよび産地レベルでどのように達成しようとしているか、そのためにいかなる主体関連携が志向されているかを問うものである。 本研究では1)肉用牛産地における経営体の多様性の把握、2)和牛子牛、和牛枝肉の商品性の地域間比較、3)経営体による収益性向上と環境負荷軽減に関する意思決定の調査、4)畜産経営の意思決定に対する外部アクターの影響力の分析、5)地域全体としての環境負荷量の推計を行う。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、(1)栃木県内の肉用牛経営における営農改善の意向、(2)原子力災害被災地(福島県飯舘村・葛尾村)における畜産経営の再開と持続性回復の取組に関する調査を行った。それぞれに関する実績は下記のとおりである。 1)県下一円を対象とする「とちぎの和牛を考える会」研修会(2023年11月)において、参加者に対するアンケート調査を実施し、57名より有効回答を得た(参加者の34.8%)。飼料価格の高止まりと子牛価格の低迷が続いているため、今後の意向としては2022年度より「飼養規模の拡大」が減退し、「子牛の出荷月齢の早期化」「飼養頭数規模の現状維持」「事故予防・発情発見のためのICT活用」「自家で採取した受精卵の販売」の回答率が20%を上回った。また、適正であると考える子牛価格は、2022年度調査よりも5~6万円低くなり、その分の経営努力(自給飼料増産、子牛出荷の早期化)が払われている。 2)聞き取り調査を実施した飯舘村の肉用牛経営(8戸)、葛尾村の肉用牛経営(2戸)、同酪農経営(1戸)は、2戸を除き福島再生加速化交付金または原子力被災12市町村農業者支援事業を利用し、新たな牛舎建設を行っていた。とりわけ葛尾村では繁殖牛180頭、搾乳牛200頭規模の牛舎建設により、経営の大規模化が実現した。飯舘村では農地中間管理事業を利用した飼料作付地の集約化と飼料生産の拡大が図られ、営農組合との耕畜連携により、稲藁以外の粗飼料の域内完全自給も視野に入っている。一方、葛尾村では粗飼料の100%を県外より購入する選択も行われている。 福島県全体として、枝肉の市場価格は事故前水準を下回っている。営農を安定化させる方途として、1)徹底したコストカットと経営多角化、2)一貫経営の出荷枝肉の品質向上、3)購買者に好まれる子牛の再生産(血統、腹作り、ウイルスフリーの牛群飼養)が個々に選択されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
矢板家畜市場および福島県家畜市場の上場牛データを用いた、JA単位での子牛の品質評価の分析、市町村単位の家畜飼養頭数の経年変化をはじめとする環境負荷量の推計に必要なデータの収集が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
福島県の調査経営体については、子牛市場での販売実績をもとにした子牛の商品性および収益力の測定を実施する。または、栃木県・福島県の大規模経営体の増加による温室効果ガス排出量、堆肥の農地還元を加味した環境負荷量の算出に向け、着実なデータの収集を行う。また、茨城県、熊本県での畜産関係機関および大規模経営体のインタビューに着手する。
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